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Chapter1 PEG
4.交換 2.交換手技


大船中央病院消化器・IBDセンター
吉田篤史

吉田篤史
記事公開日 2011年9月20日
2021年4月12日改定

<Point(要約)>

近年、胃瘻造設の増加に伴い胃瘻カテーテル交換件数も増加している。造設同様に交換においても重篤な合併症が出現している。カテーテル交換時の最も注意すべき合併症は、瘻孔破損、誤挿入に伴う腹膜炎である。そのため安全・確実な胃瘻カテーテル交換が必要とされる。

1.事前準備

交換にあたっては、胃瘻カテーテル交換の必要性と方法、合併症などを患者または家族へ十分に説明し、同意を得ることが大切。

交換前の準備として、現在服用中の薬物をチェックする。特に血液凝固に影響を与えるバファリン、ワーファリンなどの抗血小板薬、抗凝固薬の有無を事前にチェックすることが大事である。必ずしも全ての胃瘻カテーテル交換手技において上記薬剤を中止する必要はないが、もし中止する場合は休薬期間に起こりうる脳疾患・心疾患イベントのリスクを十分に説明しておく必要がある。最近のガイドラインでは低侵襲の内視鏡手技は抗血小板薬・抗凝固薬を継続して行うことを推奨している。

(参照) https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/54/7/54_2075
(参照) https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/59/7/59_1547

なお交換時のストレスで血圧が上昇することがあり、降圧薬内服中の患者には継続を指示する。

2.実際の手技

具体的な胃瘻カテーテル交換手技は、一般的に経皮的に古い胃瘻カテーテルを抜去して、経皮的に新しい胃瘻カテーテルを入れるの方が、内視鏡下の胃瘻カテーテル交換よりも安価で一般的である。
(参照) https://journals.lww.com/jcge/Abstract/2019/01000/
To_Pull_or_to_Scope__A_Prospective_Safety_and.7.aspx

しかしカテーテルの種類がバンパー型とバルーン型では、多少交換手技に違いがある。(カテーテルの種類については4.1カテーテルの種類と交換を参照)

【内視鏡設備のある病院・クリニックでの交換手技】
バンパー型のカテーテル交換は内視鏡設備のある施設での交換が多い。新しい胃瘻カテーテルはオブチュレーターを用いてバンパー部分を引き延ばしたのち、瘻孔の軸と平行に圧入する。胃内にカテーテルが挿入された瞬間に抵抗が無くなる感触があり、その時点で寸止めする。勢い余って胃の後壁まで穿通しないようくれぐれも注意しなければならない(図1-1)。

図1-1 胃瘻カテーテル挿入後の腹腔内誤挿入
図1-1 バンバー型カテーテルの留置
古いカテーテルを抜去した後、まず瘻孔の軸を確認して(左)、オブチュレーターを引き延ばした状態を保ち(中央)、胃内に圧入する。最後にオブチュレーターを外して終了(右)。

交換において、内視鏡やX線透視などの画像検査を利用すると胃瘻カテーテル交換の手技料(200点)が保険で加算される。(参照 保険適用について) 経皮的交換と違い、胃瘻カテーテルの挿入過程の観察のみならず胃内に留置できたことの確認が同時に可能となることが利点である。

【在宅での交換手技】
バルーン型に関しては内視鏡やX線透視設備の無い在宅や施設で汎用されており、簡便な盲目的胃瘻交換が行われることが多い。バンパー部のバルーンに入っている蒸留水をシリンジで吸引した後、古いカテーテルを経皮より抜去する。ひきつづき新しいカテーテルを胃内に入れ再度蒸留水を適量バルーンに入れ固定する。(図1-2) 注意点として交換後、新しいカテーテルが胃内に挿入されていることを確認する必要がある。胃内容物の吸引で間接的に確認する方法がとられることが多く、交換前に胃内へ液体を注入し、交換後に再度胃内容物を確認する方法である(スカイブルー法)。この方法はあくまで間接的な確認法である(交換後の確認については4.3交換後の確認方法を参照) 。なお、交換後カテーテルからの送気音を確認する方法は推奨されていない。なぜなら、腹腔内にカテーテルが誤挿入された場合でも、送気音が聞こえるからである。

図1-2 胃瘻カテーテル挿入後の腹腔内誤挿入
図1-2 プラスティック性スタイレット(交換用ロッド)を挿入。バルーンの蒸留水をシリンジで吸引した後、古いカテーテルを経皮より抜去。スタイレットに沿って新しいカテーテルを留置し、蒸留水をバルーンに入れ固定する。

<Pitfall(落とし穴)>

バンパー型では用手的に古いカテーテルを経皮から抜去するが、バンパーの埋没や強引な抜去では瘻孔が破壊されることがある(図2)。そのため胃瘻カテーテルの根元をハサミで切り落とし、内視鏡下に古いカテーテルのバンパーのみを回収する方法が上記合併症のリスクを回避できる(図3(参照 交換時のリスク)

図2 バンバーの理没
図2 バンバーの理没
このような状況において、強引に胃瘻カテーテルを経皮から抜去すると瘻孔破損につながる。
図1 胃瘻カテーテル挿入後の腹腔内誤挿入
図3 内視鏡下胃瘻交換
古いカテーテルのバンバーをスネアで把持した後、カテーテルをハサミで切り落とす(左)。オブチュレーターで瘻孔の軸を確認する(中央)。新しいカテーテルが胃内に留置されたことを確認し、古いバンパーを経口より回収する(右)。

<Advice(助言)>

瘻孔破損や誤挿入による腹膜炎の合併症を知ること、合併症予防の対策を取っておくこと、万が一合併症が起こった場合に焦らずに対処法を知っておくことが重要である。

安全確実な交換のために工夫された製品もある。ワイヤーガイド下に交換すると、胃瘻カテーテルの誤挿入がより少なくなるため、ガイドワイヤーを付属したキットも多く発売されている(図4)。バンパー型に金属性ワイヤーが付属された商品や、バルーン型にプラスチック性スタイレットが付属された商品もある。
 また最近では胃瘻交換確認用の内視鏡がでている(交換手技料の算定ができる)。軟性部径φ2.4mmの超細径ながら、明るく優れた解像力を実現し、内径の狭いPEGカテーテルにもスタイレットの代わりに胃内へ安全にカテーテルを誘導してくれる。小型軽量のバッテリー式光源ユニットの使用により、持ち運びに便利で在宅でもPEGカテーテルを交換することが可能なった。(図5

図4 ワイヤーガイド下の交換
図4 ワイヤーガイド下の交換
古い胃瘻カテーテルをオブチュレーターにて引き延ばし、ワイヤーを留置(A)。その後ワイヤーガイドに経皮から抜去し、残しておいたワイヤーをガイドに、新しいカテーテルを胃内に挿入する(B)。
図4 ワイヤーガイド下の交換
図5 FPー7RBS:軟性部径φ2.4mmの超細径ながら高解像度を有し、内径の狭いPEGカテーテルにも適応する。

しかしながら100%確実であるといった交換手技は無い。胃瘻造設後の初回カテーテル交換時に誤挿入は多く発生し、バンパー型・バルーン型ともに初回交換は内視鏡の使用が勧められる。

誤挿入とはどんな場合に起きやすくて、また誤挿入になっていることをどのような変化から疑ったらよいか。内視鏡や透視下の交換なら画像でわかるが、在宅などで盲目的に交換した場合は注意しなければならない。交換前に胃瘻カテーテルの可動性が悪い場合は、既にバンパーが埋没している可能性があり、そのまま交換するのは危険である。交換後も同様で胃瘻カテーテルの可動性が悪い場合や痛みが強い場合も、誤挿入した可能性があり、栄養剤の注入は腹膜炎のリスクがあるため中止する。 また胃瘻カテーテルから胃内容物が吸引されない場合なども、直ちに内視鏡あるいはX線透視などを用いて、カテーテルが胃内に留置されていることを確認するリスクマネージメントが必要である。

さらに交換後初回注入の際には、慎重な態度で臨む必要がある。患者の状態の変化およびバイタルの変化等を、通常の栄養剤注入以上に詳細に観察する必要がある。 (参照 胃ろうチューブ取扱い時のリスク)

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