Q1.家の中で寝てばかりいます。食べるための体力をつけたいのですが、何から始めたら良いのでしょう?

Q1-3:筋トレと栄養状態の改善を薦める人がいます。どちらが正しいですか?

A:まず栄養の視点から、リハビリテーションを考える事が大事です。

栄養状態は摂食嚥下活動だけでなく身体活動するための基礎となります。栄養状態が悪い状況では、身体機能の回復や機能維持に影響を及ぼし、必要以上に身体を動かしていくことは身体にとってマイナスになります。そのため、現状の栄養状態を確認し、低栄養状況であれば栄養の改善を図る必要があります。栄養状況の改善を促し、その改善に応じて身体活動を高めていきます。
ただし、摂食嚥下障害者は、経口で栄養摂取することが困難な場合があります。障害の状況に応じて、食形態の工夫や食品の選択、経口以外の栄養摂取方法の検討が必要になります。
栄養状態の評価には、現状の食事摂取状況や栄養摂取状況、食欲や体調等が挙げられます。身体評価では、体重やBMI(Body Mass Index)、四肢周径等が挙げられます。体重は簡便に確認できる重要な指標であり、特に高齢者の場合、体重減少は栄養状況が悪くなっている可能性が考えられます。適宜体重を測定し、変化を確認していくことが必要です。四肢周径では、上腕や下腿の周径が栄養状況の目安になります。簡単な確認では、両上肢で下腿を握り下腿の太さを確認することが筋力や栄養状況の目安になります。また、血液データでは、アルブミン(Alb)やリンパ球、総コレステロールが代表的な指標になります。その他、栄養スクリーニングツールには、SGA(主観的包括的アセスメント)、MNA-SF(簡易栄養状態評価表評価尺度)、MST等の評価尺度がありますので、必要に応じて参照していただければと思います。

筋力トレーニングの必要性

筋力強化は、いわゆるスポーツ選手だけでなく、近年は高齢者の身体機能維持や介護予防的な観点からも重要と考えられています。加齢に伴い筋量や筋力は低下します。最近はフレイルやサルコペニアと言った筋量や筋力の低下により引きおこる身体機能低下の概念が一般化してきています。摂食嚥下の活動は全身の活動であるため、局所だけでなく全身運動を促すことも必要です。筋力強化の方法は対象者の個々の身体状況によって異なります。例えば、錘を使って個別筋に対する強化方法や、立ち座り動作のような負荷のかかる運動が考えられます。ただし、筋力トレーニングをむやみに行うことは、身体へ負担をかけるだけでなく心臓等への過負荷によるリスクも考えられます。対象者の生活状況や身体能力を踏まえて筋力強化の方法や運動量を設定していく必要があります。個別の運動内容等は専門家に相談することをお勧めします。また、筋力をつけるには時間がかかります。そのため、休息や栄養を補いながら運動を継続していくことが大切になります。現状の筋力の評価として、握力は全身の筋力の目安となる簡便に測れる指標と考えられています。参考までに、サルコペニアの診断基準としての握力の基準値は日本人男性:25kg以下、女性:20kg以下になります。

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