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おサル先生の在宅医療入門
「在宅NSTの訪問栄養指導!」の巻(6)

小川 滋彦(金沢市・内科)
(石川保険医新聞「おサル先生の在宅医療入門65~70」より一部改変して転載)

在宅を視野に入れてこそのチーム医療

これまでの5回の連載を通じて、訪問栄養指導の具体例をフィクション形式でお伝えしてきた。では、わざわざタイトルに「在宅NSTの」とつけたのはなぜか。

NSTとは栄養サポートチームの略語であり、「チーム医療」である。ここで登場する管理栄養士は、専門職としての役割を果たしたわけであるが、あくまでも「チーム医療」の一員としての仕事である。

彼女の仕事の前には、本来なら歯科医と歯科衛生士による歯科治療や口腔ケアがなされなければならないし、言語聴覚士による摂食嚥下の評価とリハビリテーションも同時にすすめられればもっと良かっただろう。さらに、本例はその後、咽頭癌の進行により胃ろうを受け入れていかねばならず、経腸栄養管理となり医療的なケアの占める割合が大きくなるが、その状態になっても支えていかなければならない。口から食べられている間だけ熱心に介入して、胃ろうになったらもう知りません、などと言うことはありえない。

おそらく信頼を寄せる理栄子の説得なら、そして栄養の意味を体で理解した今のA氏なら、胃ろうを受け入れることはできるかもしれない。胃ろう栄養となった後も、彼女は栄養士としてA氏の栄養管理を行い続けるだろう。

「もたれ合い」はチーム医療にあらず!

専門職による自分の領域の仕事で「よくなった」話は、従来少なからずあった。時には手前味噌としか言いようのない話すらあった。しかし、自分の手に負えないと判断した時に、別の専門職に相談を持ちかける。時には委ねる。だから「チーム医療」なのだと思う。「患者中心の医療」を目指すなら、自分の専門にこだわらずに多職種との連携をはかるべきである。患者を支えるために力を出し合うべきである。もたれ合う「チーム」ではなく、ひとりひとりが理栄子のように力を出し切れれば素晴らしい。

そのような願いを込めて、「在宅NSTの」と付けさせていただいた。

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