HOME > レポート > 2003.10.06

一般演題より  セッション9「在宅支援」

  第2会場での3番目のセッションである「在宅支援」は、昭南病院外科・有本之嗣先生の司会で進められた。以下に発表内容要旨を紹介する。(敬称略)


(有本之嗣先生)

◆往診医による在宅PEG利用者へのアンケート調査
小川医院 小川滋彦
1996年4月の開業時から2003年5月までに往診を行ったPEG利用者34名に無記名アンケートを実施。胃瘻そのものに対してではなく、胃瘻をとりいれた在宅医療がご本人やご家族にとってよかったかどうか、「良くなったと感じるかどうか」の主観的印象「はい・いいえ・どちらでもない」という三択で回答。病院を追い出されるような環境での仕方ない在宅と、入院医療に満足できなくて決断した在宅とでは、受け入れ方やニーズのレベルも異なる。全体的にPEGの導入は肯定的と思われた(詳細は「PDN通信」第6号にご執筆頂きます)。

◆当院における経皮内視鏡的胃瘻造設術後の経過からみた一考察
大滝病院 鈴木久江、ほか
1994年から現在までの9年間に、当院でPEGを施行した患者の経過が把握されていなかったので、施行者179名の追跡調査を行い、今後の課題をさぐった。その結果、在宅移行率12%、自宅での看取り・死亡率2%とPEGの目的の一つでもある在宅への復帰が少なかった。共働き率が高い地域で、日中患者が独りになりやすく在宅療養は不安という背景も一因と思われる。患者の意向を汲み取りながら家族に丁寧な指導を行い、納得できるサービスを受けられるよう調整するケアマネジャーの力量が問われているといえる。トラブル発生時にも迅速に対応できる在宅支援のシステムの構築が急務である。

◆PEG施行患者の長期在宅介護への支援条件とは?
-当院胃瘻外来における在宅PEG経腸栄養施行症例に対する取組み-

藤田保健衛生大学公衆衛生看護科 野田潤子、ほか
2001年6月に設置された胃瘻外来がこれまでに行ってきたとりくみから、長期在宅介護のための条件を検討した。長期在宅介護のためには適切な栄養管理の実施が各種合併症予防につながるため、定期的かつきめ細かな栄養アセスメントと適正な栄養・水分投与を行うことが大切である。と同時に、胃瘻外来受診時以外にも看護外来として介護家族や院内・院外のスタッフとの連携を行った。適切な栄養管理と、入院病棟との連携で退院時までに確実な指導を介護者に行うこと、そしてデイケア、ショートステイなどの利用システムが整備されることで、医療依存度の高い患者在宅移行は可能と考えられる。
◆急性期病院における胃瘻外来のあり方
東京大学胃・食道外科 山口浩和、ほか
当院のような急性期病院では、患者の疾患が多岐にわたり状態も様々である。当院では長期のケアを要する患者は少ないが、経口摂取機能障害による胃瘻の適応は多い。そこで2002年7月、これまで各科バラバラに行われていた胃瘻造設および管理を、リスク管理も含め1ヶ所に集中させ、胃瘻外来を開設した。施行そのものが原疾患を進行させ全身状態を悪化させることがないよう、造設時期については原疾患の担当医との緊密な連携が必要と思われる。在宅患者は外来でフォローアップできるが、転院した場合はその後の経過観察が出来ないという問題点をかかえている。他施設から交換を依頼される際は、情報が少ないことが多く、安全のために内視鏡を使っている。主治医が経腸栄養を好まないケースもあり、各科との情報交換にも課題は多いが、将来的には胃瘻外来がNST設立につながる橋渡しの役割をはたしたい。

◆ストーマ保有の諸問題を抱えた老人でも在宅へ
-セルフケアが確立できた3症例を通して-

飯塚病院ストーマが依頼 畑 美津子、ほか
 高齢化社会に伴い、ストメイト(人工肛門保有者)の高齢者化、自己管理の難しさが問題になっている。在院日数短縮も加わり、セルフケアや家族指導が充分できないまま退院させられることが多いため、安心して在宅に移行しているとは言いがたい。PTなど他職種と共に訪問看護でも指導を行い、個々にあった社会資源(例えばデイサービス)を選択し用意できれば、ゆとりある在宅にもつながるのではないか。在宅を支えるにはチームで関わることが大切で、特に介護スタッフとのタイアップの必要性を強く感じている。

(質疑応答も白熱)
戻る