栄養投与ルート

(ASPENのガイドラインより)

福井県立病院 内科医長・NST Chairman 栗山 とよ子

栄養管理を成功させるために重要となるのが栄養補給経路です。経口投与が理想ですが、それが不能~不十分であればまず対象者の腸管の使用が可能かどうかを判断し、可能であれば経静脈投与より経腸投与を選択します。その理由の例を表1に示します。経静脈栄養が主となる場合も、消化管が部分的にでも機能していれば許容範囲内で経腸栄養を併用することで腸管の廃用性萎縮の進行・窒素損失をある程度抑制できます。

表1.経腸栄養剤の有用性

1.消化管の健全性と機能(吸収能・免疫能・内分泌能・腸管バリア)を維持する。

2.安価で費用対効果が高く、かつ十分な栄養補給が可能である。

3.窒素平衡が良好である。

4.静脈栄養に比べ、代謝合併症や機械的合併症の発生率が非常に少ない。

経腸栄養による栄養管理

腸管栄養を選択した場合、目的は2つあります。

ひとつは代謝必要量を十分に投与することで栄養状態を維持・改善し、病態の早期回復を促進して感染症等の合併症を防ぐことです。ふたつ目は腸管自身に栄養補給することで腸管の形態と機能を保つことです。これによって腸粘膜の腸上皮からなる機械的バリアーと、消化管リンパ装置(GALT;gut-associated lymphoid tissue)による免疫バリアー機能を維持し、腸管内の細菌や毒素が腸管粘膜細胞を通過して腸間膜リンパ節・各種臓器・血中などに侵入するいわゆるBacterial translocation (BT)を防止することが可能となります。(経腸栄養の消化管の生理・機能性に対する利点を表2に示します)

表2.消化管の生理と機能に関する経腸栄養剤の利点

1.侵襲期の代謝亢進反応を緩和する

2.ストレス潰瘍の発生を予防する

3.腸ペプチド、分泌型IgA、ムチンの分泌を維持する。

4.廃用性萎縮に起因する窒素喪失と蛋白質喪失を緩和する。

5.消化酵素の合成を促進する。

6.消化管機能(吸収、免疫、内分泌、バリア)を維持する。