Q2.家族やヘルパーさんでもできる、口腔ケアや訓練の仕方について教えて下さい
(看護のテクニックがなくても取り組めること)

Q2-3:食事をしていなくても、唾液誤嚥が心配な場合、安全に口を使う練習はあるのでしょうか

【噛む練習】

図12
目的

食物を使用せずに噛む練習をする。

使用物品

ハンカチやハンドタオルなど。

内容

ハンカチやハンドタオルは吸水性に優れているため、口腔内に唾液がたまりにくく、過度の唾液誤嚥を防ぐ目的で使用する場合があります。

ハンカチの大きさやタオル生地により厚みや形を変えることができます。小さめのハンカチならキャンデー風に折ることもできます。ハンドタオルならきつめに巻きます。割り箸をハンカチで包むこともあります。噛み易さや残存歯の状況により痛みがないように噛む練習をします。

※参考:ハンカチキャンディーの作り方

参考:リハビリテーション関連製品一覧

【咀嚼の練習】

図13【咀嚼の練習】
目的

食物を使用せずに咀嚼の練習をする。

使用物品

ハンカチや口腔のケアで使用するガーゼなど。

内容

実際の咀嚼同様、口腔に取り込んだものを舌などで移動させて噛んだり、口外へ出したりします。

ハンカチの端を結んで口腔にとり込み、結び目を口の中央から奥歯へ運びます。これができれば、左右反対側の奥歯に結び目を運びます。舌だけでなく、口唇や下顎の運動を伴いながらでも左右へ移動できることを目標にします。

口腔のケアで使用するガーゼの場合、1枚を小さく折りたたみ、もう1枚のガーゼの中央に置き、テルテル坊主の要領で包み込んでねじります。さらに、ガーゼの頭を冷水に浸して絞ると、体積が小さくなり剛性もあるので口腔内へ取り込み易くなります。ハンカチ同様、左右の奥歯へ移動したり口外へ排出する運動が可能です。口腔の清掃後に、それほど準備を要せずに手軽に行え、練習ができます。冷水に浸す場合は、しっかりと水分を絞ることが重要です。ハンカチと比べて吸水性が低下するので、唾液が溜まるようでしたら、新しいガーゼで吸収させます。吸水目的の場合、ガーセは冷水に浸しませんが、こよりのように巻く事で、狭い口腔内に進入し易くなります。

【舌の突出】

図14【舌の突出】
目的

舌の可動域の維持。

使用物品

棒付きの飴。

内容

棒付き飴を口唇に近づけ、利用者に舐めてもらいます。歯列より奥では、誤って飴を飲み込んでしまう場合もあるので、口唇までとします。口唇まで舌の突出が可能なら飴の距離を離し、最大限に突出できる範囲を評価し、目標距離を設定します。

注意点

訓練すべてに共通しますが、口腔の衛生を確保してから行いましょう。唾液が溜まり、嚥下が難しくなる場合はハンカチなどで吸収しましょう。

参考:リハビリテーション関連製品一覧

引用・参考文献

  • (※1)牛山京子 意識障害・栄養管理(静脈栄養・経腸栄養)・開口困難の方への口腔 清掃.在宅訪問における口腔ケアの実際 医歯薬出版 1998
  • (※2)青木智美子:藤島一郎監修 高齢者の楽しい摂食・嚥下リハビリテーション 黎明書房 2009
  • (※3)五島朋幸:食べる障害への対応.おはよう21 2008年8月号
  • (※4)大野友久:口腔ケア.聖隷嚥下チーム 嚥下障害ポケットマニュアル第3版 医歯薬出版 2011
  • (※5)金子芳洋:間接訓練法.金子芳洋 千野直一監修 摂食・嚥下リハビリテーション 医歯薬出版 1998
  • (※6)岡田澄子:成人の間接訓練法の基本.向井美恵 才藤栄一監修 摂食・嚥下リハビリテーション第2版 医歯薬出版 2007
  • (※7)福岡達之:等尺性収縮による舌挙上運動と舌骨上筋群筋活動の関係-舌骨上筋群に対する筋力トレーニング方法への展望-. 耳鼻と臨床56:s207-s214、2010
  • (※8)西尾正輝:口腔器官の訓練.日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 eラーニング対応 第4分野 摂食・嚥下リハビリテーションの介入I 口腔ケア・間接訓練 医歯薬出版 2011
  • (※9)福岡達之:バイトブロックによる下顎位の違いが舌背挙上時の最大舌圧と舌骨上筋群活動に及ぼす影響.嚥下医学vol1 2012
  • (※10) 宮本恵美:摂食姿勢の変化が舌圧等の嚥下機能に与える影響について.第17回第18回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会冊子 2011
  • (※11)才藤栄一:リハビリテーション医学総論.向井美恵 才藤栄一監修 摂食・嚥下リハビリテーション第2版 医歯薬出版 2007

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