飛田洋さん

なにくそ!俺はここにいる198

京都府 飛田洋さん(76歳)

飛田洋さんは、平成10年11月に脳梗塞を発症しました。

完全四肢麻痺、構音障害、嚥下障害を認め、入院中に胃ろう造設術、気管切開術が施行されました。平成12年6月に在宅へ移行され、かすかに動くようになった指先でパソコンを操り、創作活動を続けています。

毎日書きためたものは、月刊誌としてまとめられ、製本されています。

■ ハンサ・無責任者の川柳風一途な《二行詞》


①・思い込み 勝手にやって 文句言い
            抗議出来ぬは 不便なことよ

②・前任者 コケにするのは いかがかな
            日本人には あまりはやらぬ

③・ぶさいくに 不細工なんて 哀しいね
            云い返せぬが 私の良さか

④・指示なくば 忘れる事が 目立つから
            仕切り屋俺は 必要悪だ

⑤・お通しを お通じなんて 読み違え
            笑うしかない 万年ベッド

⑥・破天荒 常識的じゃ 行かんのか
            政治のガンは 秩序を乱す

⑦・かえりみて 無知ほど怖い ものはない
            開きなおれば 知らぬが仏

⑧・血圧の 上がり下がりは 良くなくて
            いつもこの部屋 エコ設定だ

⑨・うるささに なれてる妻と なれぬ俺
            被害のほどは 聞くまでもない

⑩・無茶言わず 来るな買うなよ 拘わるな
            来るもの拒まず 去る国追わず

⑪・つべこべと 文句をつけず おられない
            そんな人いる 生き方だもの

⑫・無視すれど 絡みうるさい 蚊や小虫
            刺激はこんで 遊びに来たか

⑬・夜が明ける 何もないまま 日が暮れる
            悩まず迷わず 知らぬが仏

≪篭もりうた≫

≪泥んこ暮し≫


『一』
人間大好き   人間が
知らず知らずに 閉じ篭もり
 一番最初の   被害者は
 何処のどなたと 聞いてない
何の計算    含むのか
認めないまま  閉じ篭もり

『二』
外交的だと   自認して
引っ込み思案の 引き篭もり
 一年二年    矢の如く
 過ぎて忘れた  諦めた
義理を知らぬと 悪評を
噛んで飲込む  閉じ篭もり

『三』
人間嫌いで   ない筈が
どうせならばと 立て篭もり
 面会謝絶で   ないけれど
 人に逢うのが  怖くなり
タヌキ寝入りを してみたり
調子悪そと   立て篭もり


『一』
金は土俵の  砂の中
 四股と鉄砲  掴みとれ
弟子入りし立ての泥んこ暮し
 西も東も  わからない
夢はでっかく 大きいが
 早くここから 抜け出すぞ

『二』
一に稽古だ  二に稽古
 三四稽古で  五も稽古
稽古疲れの  泥んこ暮し
 悔し涙で   泥まみれ
夢はでっかく あるけれど
 先ずは給金  貰うのだ

『三』
足は親指   手は小指
 怪我は油断で 命取り
馴れは大敵  泥んこ暮し
 聞いて挑戦  見て努力
夢はでっかく 焦りなく
 いずれ結いたい大銀杏



≪寝たきり爺≫

≪申し訳ない≫


『一』
呼んでも結構  寝たきり爺
天下ご免の   不細工さ
 別に見舞いも  誰も来ぬ
 困りはせぬぞ  風呂はパス
 見掛けは一寸  悪いけど
 垢で死ぬのは  まずおらぬ

『二』
呼んでも結構  寝たきり爺
アバタ面した  赤ら顔
 今は鏡と    縁がなく
 自分の姿    わからない
 大きな態度だ  過去の事
 雲の流れだ   行くがまま

『三』
呼んでも結構  寝たきり爺
今日も変わらぬ 無精髭
 別に約束    予定なく
 多忙だったら  風呂は次
 痛くもないし  痒くない
 垢で死ねたら  有難や


『一』
何から何まで  世話を掛け
介護看護に   涙で曇り
家族に悪いと  身を恨む
 こんな立場で  見込なく
 申し訳ない   申し訳ない
 ごめんご免の  わびばかり

『二』
何から何まで  世話を掛け
声を失い    心は辛く
家族に悪いと  身を責める
 個性なのだと  諦めて
 申し訳ない   申し訳ない
 受けて流して  くれるのか

『三』
何から何まで  世話を掛け
弱い立場の   甘えにすがり
家族に悪いと  身を嘆く
 こんな病気の  明け暮れを
 申し訳ない   申し訳ない
 長い犠牲を   ありがとう


主治医より一言

《申し訳ない》

こちらこそ、申し訳ありませんね。飛田さんの生活は1999年に脳梗塞で倒れてから動から静に一変され、8ヶ月の入院中にPEG生活が始まったのですが、持前のプラス思考で奥様の介助で文字盤から目で字を選んで簡単な会話をしていた状態からリハビリによってわずかに動くようになった右手の指先を使ってパソコンの重度障害者用のコミュニケーション支援ソフトを使って完全に我々と意思疎通を図れるようになられましたね。その時にペグの感想を聞いたところ、「おぼろに最適、青汁もOKだし、偏食もなくなるし、床ずれの心配もなく、成人病予防にもよい」と伝えて貰い、関西に1986年に初めて紹介した者として感激したのを今も覚えています。若いころに作詞家を目指していただけあってその後の活躍には、目を見張るものがあります。飛田さんの読者ファンの一人として多くの事を学び、勇気づけられました。これからも、飛田さんのQOLが高められるように日々努力と研鑽を積み、これからも、頑張っていきたいと思いますので宜しくお願いします。(岡野拝)