開催日時 : 平成17年7月10日(日)
場 所 : 彩の国すこやかプラザ(さいたま市)
埼玉県摂食・嚥下研究会発足 さる7月10日、彩の国すこやかプラザ(さいたま市)において、埼玉県摂食・嚥下研究会が発足した。この前後にNHKニュースや埼玉新聞の報道をご覧になった方もあるかもしれないが、経管栄養施行者の中にも「食べたい」という希望が強い方、適切な評価とリハビリテーションを行なえば経口摂取が可能になる方、味わう楽しみ程度であっても家族と同じものを口にする方など様々な方がいる。厚労省も個別栄養ケアを介護報酬の対象に定めた。このような現実の下、発足したのが本研究会である。全国に先駆け、摂食・嚥下に関わる25の専門職団体が結集するとあって、埼玉県も後援している。埼玉県副知事の都筑信氏によると、現在の埼玉県の平均年齢は全国平均より若いが、平成25-30年頃最も急速に高齢化が進むという。そのときに、本来楽しみである「食べること」が高齢者のQOL(=生きていることの質・価値。命そのものの質)の低下をもたらし、苦しみの要因にならぬよう、県としても介護保険制度の改正をふまえ、今から体制を整えようということだ.。 |  |
埼玉県副知事 都筑信氏 |
本研究会の会長は埼玉県医師会長・吉原忠男先生。副会長は埼玉県歯科医師会長・蓮見健壽先生,埼玉県薬剤師会長・小嶋富雄先生、埼玉県立大学長・柳川洋先生。以下、役員には歯科、耳鼻咽喉科、内科、神経内科、口腔衛生の医師をはじめ、看護協会、訪問看護ステーション連絡協議会、薬剤師会、介護支援専門職協会、老人保健施設協会、歯科衛生士会、言語聴覚士会の代表などが並ぶ。
対象は高齢者だけではなく、口から食事を取れない発達障害児(者)にも及ぶ。本年度の事業として、12月に症例検討会が、3月には講演会が計画されているが、「施設・病院・居宅などにおける誤嚥の早期発見及び対処法について~より安全な食事介助法~」をテーマとしている。
設立総会後、金子芳洋先生、才藤栄一先生のお二人が講演された。
摂食・嚥下障害が生活全般に及ぼす影響を、まず行政および各関連職種が同じ目線で認識すること、そして専門職による正しい評価に基づいた適切な治療・ケア・リハビリを行なうこと、その実践のためには地域でのチームアプローチ(職種間の垣根をとりはらい、同じ目的に向かって共通の言葉で対等に語り合うことが前提)の体制を整えることなどが、高齢者や障害者など「食べる」ことに障害を持つ人々のQOL(=生きていることの質・価値。命そのものの質)の改善につながる。施設介護における個別の栄養ケアについても、一入所者の食事内容、食形態、摂食状況、疾患、心の状態など総合的に判断してどのよう「口から食べたい」という欲求を満たす方法があるかを考えていくことは、決して一職種でできるものではない、と金子先生。
埼玉県における今後の取り組みでは、どこにどういう専門職がいるのかを示すためのマップの作成、地域レベルの活動で重要な多職種の連携、具体的な指導方法、埼玉県という大きなエリアを活動しやすい小さな単位に分割するシステム、継続的研修機関の問題などが課題となりそうだ。
専門的口腔ケア(歯科治療、歯科保健指導、専門的口腔清掃、積極機能訓練)は、厚労省の高齢者リハビリテーション研究会が提唱したように、「高齢者リハビリテーションのあるべき方向」として必要な基盤整備に位置づけられている。そのことを行政が明文化したことの意義は大きい、と同研究会の理事、刈部俊治先生も語る。
才藤先生は、VFやVEなどによる嚥下機能評価とそれぞれの症状にふさわしい治療やケアを行い、安全かつ最良の摂食状態をつくることが重要であると強調された。単に誤嚥性肺炎や窒息の予防、脱水・低栄養の回避というだけでなく、食べる楽しみを患者ごとに異なる状況下でどう確保するか、それらを包括的に考え対応するのが摂食・嚥下障害のリハビリテーションである、とのこと。その前提が口腔ケアであることを、行政、各種協会、医療・看護・介護職スタッフすべてが認識し、連携していくには、地域歯科医師、歯科衛生士の果たす役割は大きい。
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会場は満員 |
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熱心な参加者たち |
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埼玉県医師会長 吉原忠男先生(左)
同歯科医師会長 蓮見健壽先生(右) |

会場を暗くせず、参加者の目を見て講演される金子芳弘先生(明海大学歯学部客員教授、日本摂食・嚥下リハビリテーション学会理事長)
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高崎から駆けつけてくださった才藤栄一先生(藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学講座教授)
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<お問合せ>
埼玉県摂食・嚥下研究会事務局
⇒埼玉県歯科医師会事務局
TEL:048-829-2323
FAX:048-829-2376
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