演題1 在宅における胃瘻ケア~訪問看護師の役割を考える
北海道総合在宅ケア事業団 長沼地域訪問看護ステーション(夕張郡長沼町)
○黒田浩子、弓削七恵
【
はじめに 】当ステーションでは、平成13年から1名の胃瘻造設者に対し、試行錯誤しながらケアを行なってきた。今回、今後のケアをより有効なものにしたいと考え、自分達の行ってきた胃瘻造設前後のケアを整理・分析した結果、訪問看護師の役割を再認識できたので報告する。
【
研究目的 】胃瘻造設者のケアにおける訪問看護師の役割を明確にし、今後のケアにいかす。
【 研究方法 】1.当ステーション利用者である胃瘻造設者1名の訪問看護記録、インタビューにより、利用者本人の状況と家族の言動、及び看護者のケア内容を抽出し分析した。(倫理的配慮:利用者と家族に対し、守秘義務に基づいて研究発表の主旨を口頭で説明し、承諾を得ている。)2.研究期間:平成12年7月~平成16年9月
【
結 果 】事例概要;A氏、76才、女性、大脳皮質基底核変性症、日常生活全介助。発語不能。経過:嚥下困難により経口摂取量減少、胃瘻を勧められたが、本人は拒否し、家族も迷っていた。看護師は思いの傾聴と適切な自己決定ができるよう、情報提供に努めた。結果、末梢点滴の限界もあり胃瘻造設を決心した。造設後、家族は本当にこれで良かったのかと葛藤していたが、A氏の状態が以後良好に保たれていることから、この選択を有効なものと受け止める事ができた。ケアの主な内容は―①栄養水分管理、②皮膚トラブルやカテーテルトラブルへの対応、③嚥下のリハビリと口腔ケア、呼吸リハビリ、経口摂取状況の把握と家族指導、④家族の管理方法の見直しによる負担軽減、⑤往診医と胃瘻担当医との調整、⑥ヘルパーへの指導と情報交換―であった。これらの過程で、家族の葛藤に看護師が気づかなかった時期があるなど、かかわりの不足を認識するとともに、胃瘻造設後のケアが、その後の生活の満足につながり、それが胃瘻を肯定的に受容するプロセスである事を認識した。現在、A氏は胃瘻を造設して良かったと意志表示している。
【
結 論 】訪問看護師の役割は、次のことを十分認識してケアすることである。
1.胃瘻造設の意志決定を支えるケアは、生活背景の十分な理解と信頼関係のもとにできる。
2.円滑な胃瘻管理と身体状態を良好に保つケア、及び本人・家族の思いを整理できるようかかわることが、胃瘻を肯定的に受容していく過程に寄与する。
3.経口摂取可能時は、維持の為のケアも胃瘻に関連する重要なケアである。
4.医師やサービス関係者との連携を密に行なう等、コーデイネーターの役割を担う必要がある。
5.質の高いケアの提供のために、新しい情報入手に努めることが重要である。
演題2 「胃瘻外来」を開設して
旭川赤十字病院 内視鏡室1) 消化器内科2)(旭川市)
◯澤田和枝、鏡よう暢子、安保淳子、伊賀美千代、鈴木真澄1)後藤拓磨、吉田暁正、外川征史、藤城貴教2)
[目的]当院ではこれまで経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)経皮経食道的胃管挿入術(PTEG)、およびチューブ交換は消化器科外来で各曜日の担当医師が個々に対応していた。近年PEG・PTEG造設患者の増加に伴い、PEG・PTEGチューブ交換の頻度も増加しているが、外来での待ち時間の延長・病院と患者間の連絡行き違いによるトラブルも生じていた。そのため患者及び家族によりよい医療サービスを提供する目的で、2004年1月より週に一回胃瘻専門外来を新設したので、その利用状況を調査し報告する。
[方法]2004年1月?2004年9月に当院胃瘻外来の利用状況を集計し、検討する。
[結果]胃瘻外来受診者総数はのべ182名で、そのうちわけは地域医療連携室からの紹介による受診者12名、その他新患受診者数33名、再診者数137名であった。新たなPEG造設者数51名、PTEG造設者数15名で、造設にはクリニカルパスを使用し実施した。
[結論]通常の消化器科外来と分離し、胃瘻専門外来を新設したことにより、外来での患者の待ち時間は短縮され、病院と患者間の大きな行き違いもみられなくなった。また、胃瘻造設後の相談窓口となり、PEGに関わるチーム医療の足がかりとなった。
演題3 PEG造設記録用紙の作成と活用
町立長沼病院 内視鏡室(看護師)1) 同
内科消化器科2)
○八藤後栄子、塩谷千代美、今野朋子、高嶋洋子、村井弥生、大道寺明子1)
倉 敏郎、町田卓郎、西堀恭樹、西堀佳樹、前田 健
【はじめに】近年、経皮内視鏡的胃瘻造設術(以下PEG)は内視鏡技術の向上に伴い急速に普及している。当院では、平成6年11月より平成16年9月までPEG造設を185件行っている。高齢化が進んでいる地域であり、当院でのPEG造設患者は平均年齢82.5歳と高齢で老人性痴呆や脳血管障害の患者が多数を占めている。当院内視鏡室では、PEG造設にあたり術前訪問を行っていたが、従来の記録用紙では患者の全体像を把握するのが困難な場合があり、内視鏡室入室後に混乱をきたすこともあった。また病棟への引継ぎ事項の申し送りが不十分となることもあった。
そこで私たちはPEG造設患者の情報を医師、内視鏡室、病棟で共有することで、安全でスムーズに胃瘻造設及び造設後の管理が行えると考え、術前から術後までの記録用紙を改良し、その有効性と問題点について検討したので報告する。
【研究方法】対象は平成16年6月から9月までの10例に造設記録用紙を作成し術前訪問する。得られた情報を元に、観察点・注意点を検討し介助にあたる。造設後は用紙をコピーして病棟へ引継ぐ。
【結果・考察】呼吸状態、合併症、採血データ、PEG造設による合併症など、術中・術後に問題となりうる項目を列記し、明確にしたことで、患者の全体像を把握することができた。患者の全身状態を把握することにより、造設時に予期しうる合併症を術前にシュミレーションし、必要となりうる物品、薬品の準備や、医師からの指示への対応を想定することで、スムーズ且つ安全にPEG造設に臨むことができたと考えられる。さらに、術後も造設時の状況を記録用紙を用いて紙面化し、問題点を明確にして引継ぐことにより、術後の合併症や栄養管理を行う病棟看護師や医師との連携が深まった。PEG造設患者のほとんどは自分の意思・苦痛を伝えられないことが多い。その中でチームとして内視鏡室、病棟、医師が情報を共有することは、PEG造設をスムーズ且つ安全にし、患者の負担を軽くすることにつながるのではないかと考える。
演題4 北海道総合在宅ケア事業団における胃瘻造設者の現状報告
北海道総合在宅ケア事業団 長沼地域訪問看護ステーション(夕張郡長沼町)
○
弓削七恵、黒田浩子
【 はじめに 】近年、在宅における胃瘻造設者は増加傾向にある。当ステーション利用者は現在1例だが、昨年の北海道胃瘻研究会発足を機に、ケアの振り返りを行なった際、北海道での普及状況を知りたいと考えた。今回、総合在宅ケア事業団全体の実態調査を行なった結果、現状が明らかになったので報告する。
【
研究目的 】北海道の在宅における胃瘻造設者の実態を把握する。
【 研究方法 】北海道総合在宅ケア事業団58ステーション(以下STと略す)に対する、胃瘻造設者に関する実態調査(アンケート) アンケート項目:
①平成16年4~9月に登録されている利用者中の胃瘻造設者数
②胃瘻造設者の疾患名 ③経口摂取併用数
④カテーテルの種類と交換場所 ⑤経験したトラブルと対応
⑥日頃感じていること、心がけていること
【
結 果 】アンケート回収率100%
①上記期間に利用者として登録されている胃瘻造設者は、合計146名(腸瘻5名を含む。49STで対応)。②疾患は脳血管障害や痴呆54%、神経難病31%、その他15%。③わずかでも経口摂取を継続しているのは57名(39%)、中には、機能維持の為に経口摂取の継続を勧める言語療法士と、誤嚥の可能性から禁止する医師との間で悩んだ末、経口摂取を継続しているケースもあった。④カテーテルはバンパー型ボタンタイプが若干多い。交換場所は自宅13%、病院87%。⑤トラブルは、瘻孔周囲の皮膚トラブルが最も多く、他に下痢やわき漏れ・逆流、カテーテルの閉塞や破損、自己及び事故抜去があり、それぞれ有効な方法で対応していた。⑥医師との調整は、主治医と担当医が異なることで困難性を感じているSTと、医師の理解や対応により円滑であるというSTに分かれ、地域医師に胃瘻の考えがなくジレンマを表す意見もあった。各STで種々の配慮をしてケアする一方、増加する胃瘻造設者やPTEG等新しい治療法に、戸惑いを表現するSTもみられた。
【
結 論 】
1. 平成16年4月~9月、北海道総合在宅ケア事業団全体では、58ST中、49STで胃瘻造設者のケアを行なっていた。数の評価はできないが、全道各地で胃瘻ケアに携わっていることが、改めて明らかになった。
2.
胃瘻管理において、胃瘻の専門医が近くにいない、又は主治医の理解がない場合、各STで苦労している。訪問看護師も知識と判断能力が要求され、それをもって医師と調整することが、利用者へのより良いケアの提供につながる。
演題5 NST・PEGチームにおける栄養士の活動について
栗山赤十字病院 栄養科1)看護科2)放射線科3)内科4)
○真井睦子1)、三島美由紀2)、片岸 賢3)児玉 佳之4)
【目的】当院では2004年4月よりNSTが稼働し、その下部組織としてPEGチームを作ったので、このチーム内での栄養士の活動について報告する。
【方法】1.PEG患者は造設予定患者も含め、全例入院後身体計測を含めた栄養アセスメントを行い、NSTミーティングでプランニングを行い、栄養剤・水分量の投与計画を作成し、その後モニタリングを行った。2.PEG造設依頼のあった病院、施設に対してはREG造設後のアセスメント内容や、栄養計画実施内容等を記載した,情報提供書を提出することとした。その後、先方施設から、情報提供書に関する意見を聞いた。3.栄養・胃瘻外来ではまず、栄養士と看護師で問診をとり、その後、身体計測を行い、医師の診察の後、3者で栄養のアセスメント、プランニングを行った。4.NST・摂食嚥下障害チームと連携し、PEG症例の嚥下造影に参加、嚥下評価を行って、経口摂取へのプランニングを行った。5.PEG患者の家族に対しては、投与している経腸栄養成分内容や、栄養計画内容について管理栄養士が説明をした。そして家族からの意見等を、聞いた。
【結果】1.NST介入により、当院PEG患者の栄養状態が血液データやADL等に優位な結果が得られた。2.情報提供書を書くことにより、地域の栄養士と交流をもてるようになり。依頼施設からは 、喜ばしい声が得られ、地域への栄養管理の大切さの啓蒙と、栄養を通じての連携が取れつつある。3.栄養・胃瘻外来ができた事により、当院としてははじめてのチーム医療が形成された。4.PEGから経口摂取へと移行される患者が優位に増加した。5.直接患者と触れ合う機会が増え、信頼を得たことが示された。
【考察・結論】これまで、当院では外来・病棟・検査・リハビリで栄養士が看護師、医師などと一緒に患者を診察、直接相談しながら、栄養について考えると言う場面はなかった。NST稼働により、チーム医療の一員として、他職種と仕事をすることで臨床栄養士として、非常に志気が向上した。また、当院では退院時医師・看護師は病院、施設に情報提供の手紙を記載していたが、栄養士が手紙を書くことはしていなかった。NST介入により、BEE、TEE、必要水分量等を明確にし、栄養プランを実施してゆく事で、患者の栄養状態を定期的に評価できるようになった。今後もPEG患者のQOLの向上のためにNSTメンバーでアイデアを、出し合いながら活動を続けていきたい.
演題6 「経皮経食道胃管挿入術(PTEG)パス導入と評価」
旭川赤十字病院(旭川市)3-4病棟
○佐々木華子美,
橋爪美樹, 守谷明子, 伊賀麻紀子, 石本ひとみ, 前田陽子、
小野田美智子、金田有里子
近年、高齢化の進行、疾患による様々な問題から経口摂取が困難な患者が増え、この問題に対して中心静脈栄養や経鼻栄養が行われてきた。しかし、合併症の問題やQOL向上のため、消化管瘻造設術が積極的に行われ、当院でも内視鏡的胃瘻造設術(PEG)経皮経食道胃管挿入術(PTEG)患者は増加し、2004年1月から胃瘻外来も開設された。造設術の増加に伴い、私たち病棟スタッフも患者様が安全に消化管瘻造設術を受け、経管栄養が確立し早期に退院することを目標に、スキンケア、感染予防、事故防止など看護ケアに努めている。また専門病棟以外でも統一したケアが実施できるようPEG・PTEG造設術パスを作成し活用している。PTEGパスは造設術施行時の点滴および退院時の指示、必要物品、Vital
Chartを組み入れ、2週間で退院予定とする1枚の様式にした。観察項目は、出血の有無、嗄声の有無、挿入部周囲の皮膚状態、嘔気・嘔吐を組み統一した観察のもと異常の早期発見に努めている。Vital
Chartを組み入れたことで発熱と瘻孔部の感染兆候の関連性など、患者の全身状態の変化が判りやすくなった。また、他病棟からもパスを使用することで、どのように患者のケアを進めていけばよいのかがわかりやすいとの評価が得られている。しかし、点滴や処置部分の項目が狭いため、基礎疾患関連の指示などには活用しにくい、Vital
Chartや看護記録との重複など問題点も明らかになった。これらのことを考慮したパスを作り直す必要がある。今後もPTEGを必要とする患者は増加することが予測される。現在、パスの見直しと共に看護手順の作成に取り組んでおり、より安全にPTEG造設術の介助、管理を行うことができ統一した看護ケアが提供することが必要である。
実際のところ、当病棟でもPTEGの管理はまだ経験が多いとは言えない。しかし消化器病棟として、今後ますます需要が増える消化管瘻の管理について学習して、より良いケアに結びつけることができるように努力していきたい。
演題7 経鼻胃管、PEG、PTEG間の比較と検討
(看護師の意識調査の中から)
医療法人社団 土田病院 (札幌市)
○桜場 愛、小野友美、嶋田香緒里、田中久美子
藤島恵美、仲田恵子、井崎千賀子
【目的】1998年から経管栄養を必要とする患者165例に対し141例にPEG、24例にPTEGを施行。看護師がどのように経鼻栄養と胃瘻を受け止めているかと、トラブル発生内容について検討した。
【方法】経管栄養にたずさわる看護職員27人に対し、経鼻栄養・胃瘻に対する認識調査とトラブル内容についてのアンケート調査を実施した。
【結語】長期栄養管理の必要な患者にとって、PEGとPTEGは経鼻胃管よりも看護管理上の安全面、患者のQOLの向上において優れているという意見が大半だった。PEGとPTEGを比較した時、①入れ替え手技
②カテーテルの閉塞 ③固定方法においてPTEGへのデメリットを感じるという回答が多かったが、管理上では"PEGとPTEGの違いを感じるか"という質問にはあまり差はなかった。これは、PTEGへのデメリットを感じながらも容易に回避できるものであり、実際のトラブルは少ない為だと思われる。また、PEG造設困難患者に対して、経鼻胃管よりもPTEGを選択することに優位性を感じる、という回答が多かったが、交換が看護師サイドで出来るという理由で、若干数経鼻胃管を選択するという回答もあった。理論上、PTEGは経鼻胃管に対し優位と思われるが、PTEGがPEG造設困難患者の経鼻胃管にとって変わる為には、更なる工夫および啓蒙が必要であると思われる。
演題8 誤嚥性肺炎を繰り返した胃癌術後患者に対するPED(経皮内視鏡的十二指腸瘻造設術)の経験
苫小牧東病院内科(苫小牧市)
○橋本洋一、西原功、石川領一、相澤律子
(目的)誤嚥性肺炎を繰り返した胃癌術後患者に残胃に対するPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)を試みるも解剖学的位置の関係から施行困難と判断し、PED(経皮内視鏡的十二指腸瘻造設術)を施行し、PEGとの比較検討を行い、その適応等について考察した。
(方法)PEGに対して用いるバ-ドPEGキットをpull法にて施行し、その後の経過を上部消化管内視鏡検査でfollowした。
(結果)胃と比較して十二指腸のひ弱性が懸念されたが、大きな問題なく安定した栄養補給が継続されている。
(結論)胃癌等で胃切除した症例やPEGが困難な症例に、危険性と利益のバランスを熟考して施行する価値はあると思われた。
演題9 PEG瘻孔からの内視鏡観察が有用であったPEG後胃潰瘍の1例
伊達赤十字病院 消化器科1)、札幌医科大学第4内科2)
○日下部俊朗、久居弘幸、釋亮也、萩原誠也1)、立野久美子2)
【目的】経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は、その手技がほぼ確立されており、適応の拡大に伴い急速に普及しているが、晩期合併症の一つとして胃潰瘍がしばしば経験される。今回我々はPEG瘻孔からの内視鏡観察が有用であったPEG後胃潰瘍の1例を経験したので報告する。
【症例】79歳、女性。慢性腎不全、維持透析のため当院外科入院中であったが、認知症状の進行に伴い経口摂取困難のためPEG造設が施行されていた。入院中も4ヶ月間隔でPEGボタンの交換を行っていたが、長期臥床のため顎関節が拘縮し開口困難となり、経口的な内視鏡検査は困難であった。平成16年9月上旬より徐々に貧血が進行するため、PEGボタン交換の際にPEG瘻孔より上部消化管細径内視鏡(GIF-XP260,
Olympus)を挿入したところ、PEG対側の胃後壁に胃潰瘍を認め、保存的に治療を行った。
PEG後胃潰瘍は吐下血等の症状がない場合でも発症することもあるため、経口内視鏡が困難な症例には、PEG瘻孔からの内視鏡観察が有用であると考えられるた。
演題10 経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)施行後3ヶ月以内の早期死亡例の検討
清田病院消化器科1), 同 内科2),(札幌市)
○村松博士1)・猪股英俊1)・藤見章仁2)・野澤えり2)・沼田隆明2)・
山内尚文2)・井原康二2)・西里卓次2)
【目的】当院では,1999年3月から2004年7月までに113症例にPEGまたはPTEGを施行してきたが,うち術後3ヶ月以内の早期死亡例について臨床的特徴を検討したので報告する.
【方法・結果】対象113例を3ヶ月以内に死亡した早期死亡群8例と,対照群105例の2群にわけて比較検討した.早期死亡の原因は,急性呼吸不全3例,急性心筋梗塞2例,肺炎2例,腎盂腎炎1例であった.平均年齢は,82.8歳と75.7歳,早期死亡群でやや高齢であった.術前の栄養状態は,血清アルブミン値,末梢リンパ球数,予後栄養指数を検討したが,いずれも対照群でわずかに良好であったがとくに有意差はなかった.入院動機は,PEG施行目的が、早期死亡群では37.5%に過ぎなかったが、対照群では,75.2%と多かった。術後肺炎はそれぞれ,37.5%,20%に発症し、早期死亡群で発症率が高かった。一方、瘻孔感染については,早期死亡群では合併しておらず,関連性はなかった.
【結論】当院での早期死亡例からの検討では,高齢,他の疾患を理由に入院し,のちにPEGを施行した症例,術後肺炎合併例という特徴が認められた。
演題11 PTEG施行困難例に対する造設時の技術的な工夫
旭川赤十字病院消化器科1)町立中標津病院内科2)遠軽厚生病院
○後藤拓磨,吉田暁正,外川征史,
藤城貴教1)、羽廣敦也,谷口雅人2)、
鈴木晶子,千葉 篤,柴田 好3)
経皮経食道的胃管挿入術(以下PTEG)は経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)が手技的に困難な患者,また消化器癌による腸管閉塞および癌性腹膜炎による麻痺性腸閉塞の腸管減圧に非常に有用な方法である.しかし,頚部臓器の解剖学的なバリエーションのため造設に苦労する症例に遭遇することがある.今回我々は住友ベークライト社製キットを用いてPTEG造設を試み,造設の成功率と遭遇した施行困難例について検討し報告する.
対象:2003年3月から2004年10月の間に当科および関連施設でPTEGを施行した患者は40例で男性18名,女性22名,平均年齢は77.4歳,基礎疾患は脳血管障害による嚥下障害,癌性腹膜炎による麻痺性腸閉塞,誤嚥性肺炎などである.
方法:PTEGの造設は住友ベークライト社製のキットを使用し,X透視下・超音波ガイド下に行った.造設成功例のうち,通常のバルーン(RFB:rupture
free balloon)操作では造設できない症例についてその技術的ポイントを検討した.
結果:PTEGを試みた40例のうち39例(97.5%)の造設に成功したが,1例(2.5%)は甲状腺腫大により安全な穿刺ラインを確保できず造設を断念した.成功例中1例は通常のバルーン引き上げ操作では甲状腺を避けた穿刺ラインを確保することができず,穿刺部反対側の頚部を指で強く圧迫しバルーンを穿刺側に偏移させる操作を加えることによって造設に成功した.
結論:超音波ガイド下で安全な穿刺ラインを確保できない場合には,穿刺対側の頚部を圧迫することによりバルーンが穿刺側の体表方向に移動し安全な穿刺が可能となる場合がある.
そしてこの様な技術的な工夫により造設成功率を高めることができると思われた.
演題12 PEG造設における合併症とクリニカルパス
星が浦病院 脳神経外科1)、釧路脳神経外科病院2) (釧路市)
鈴木 進、金子高久、恩田敏之、高谷 了1)、齋藤孝次2)
1997年4月1日より脳卒中に伴う嚥下障害患者に積極的にPEGを施行してきた。近年の老人保健施設や特別養護老人保健施設、療養型医療施設などからもPEG造設の依頼もあり着実に医療、介護の現場に浸透しつつある。
現在、クリニカルパスを導入しPEG造設を行っている。偶発した合併症により、改訂を繰り返してきたのでクリニカルパスの変遷、合併症の対処方法などを報告する。
演題13 当院における栄養サポートチーム(NST)・PEGチームの活動について
北海道栗山赤十字病院 内科1)、看護部2)、栄養科3)、放射線科4)
(栗山町)
○児玉 佳之1)、三島 美由紀2)、真井 睦子3)、片岸 賢4)
【目的】当院では2004年4月よりNSTが稼働し、その下部組織としてPEGチームを設立したので、このチームのこれまでの活動と今後の課題について報告する。
【方法】当院ではNST稼働によりPEGが啓発され、造設件数が増えている。PEGチームでは、①PEGケアマニュアル、クリニカルパスの作成、②栄養ケアマネジメントシステムによる栄養管理の実施、③栄養・胃瘻外来開設、④造設時の切開法・造設キットの比較検討、経腸栄養ポンプ使用の推進、簡易懸濁法の導入などを行った。また、⑤NST・摂食嚥下障害チームと連携し、PEG症例に嚥下造影、摂食機能療法を開始した。
【結果】①クリニカルパスでは抗生剤を2日間に短縮、イソジン消毒を止め、生食洗浄とし、ガーゼの使用も止めた。②NSTが栄養管理に介入するようになり、稼働前に比べPEG患者の栄養状態の改善を認めた。③これまで退院したPEG患者は栄養管理など十分なフォローができていなかったが、栄養・胃瘻外来を始めたことによりそれが可能となった。④術後の創部感染、下痢などの合併症の減少を認めた。⑤PEG造設後積極的には嚥下に対するリハビリを行わない傾向にあったが、それが見直されるようになった。
【考察・結論】PEGは管理が簡単と思われているが適切な管理を行っていなければ不幸な結果をもたらすことがある。入院中だけでなく、退院後も同じ管理が行えるためにも今後は周辺の施設にも同じケアマニュアルを利用してもらえるよう活動したい。また、定期的に栄養評価、カテーテル管理等を行うために、栄養・胃瘻外来は重要な役割をもつと考えられた。PEG患者が少しでも経口摂取できるように嚥下領域の知識の向上、スタッフの充実も必要である。今後はPEG患者のQOLの向上のために、地域連携の中で栄養・胃瘻管理のレベルアップを図る必要があり、地域を巻き込んだNST活動を行っていきたい。
演題14 粘度調整剤をもちいた半固形化栄養剤投与法の試み
洞爺協会病院内科(虻田町)1)、洞爺協会病院看護部2)、洞爺協会病院栄養課3)、札幌医科大学第四内科4)
長岡 康裕1)、宮崎 悦1)、原田 和江2)、根木 裕子2)、岩佐 三樹子2)、岡 玲子2)、小山 弥生2)、竹迫 由紀2)、斉藤 圭子2)、岩村 光子2)、渡辺 尚子3)、大西 利佳4)、後藤 義朗1)
【目的】当院は2000年3月の有珠山噴火により被災し閉鎖を余儀なくされていたが、移転新築し2003年5月から再開した、急性期、リハビリ、療養型病棟からなる計295床の中規模病院である。病院の機能上受療者は高齢者が多く、脳卒中後の嚥下障害や、痴呆による摂食不良などPEGを必要とする症例が多い。一方、最近PEG患者の胃食道逆流(GER)、下痢、瘻孔からのリーク、体位保持困難などに対する固形化栄養剤投与の有用性が注目されている。しかし現在固形化された栄養剤は市販されていないため、寒天で栄養剤を固形化する必要があり手技がやや繁雑である。そのため病院給食での導入や多人数への対応には難点があった。そこで今回われわれは加熱操作などが不要で調整が比較的簡単な粘度調整剤(とろみ剤)を使用し、栄養剤を半固形化して投与することを試みた。
【方法】粘度調整剤は森永クリニコ社製
(商品名つるりんこ)を使用した。本製品は増粘多糖類を主成分とする無味無臭の粘度調整食品で他製品より付着性(ベトつき)が低いという特徴がある。まず必要量の水に総量の3%の粘度調整剤を撹拌溶解し十分に増粘させた後、濃厚流動食を混合し半固形化栄養を調整した。実際の投与は調整後の栄養をシリンジで吸い上げPEGチューブからボーラス注入した。一回量300ml程度を患者の状態を観察しながら5分から10分程度かけて注入した。
【結果】GER症例に実際に投与し寒天による固形化栄養投与法と同等の効果が得られた。また下痢症例に対しても排便状況の改善が得られた。さらに短時間で投与可能なため患者のQOL向上にも寄与したと考えられた。
【結論】本法は寒天による固形化と比較して簡単に調整可能であり、病院など多人数への施行が必要な場合に導入しやすい方法と考えられた。
演題15 高齢者における摂食・嚥下障害の実態と嚥下リハビリテーション
および胃ろうの有用性
1)
慈啓会病院、 2)(財)北海道老年医学研究協会 (札幌市)
垣内英樹1)2)、東出俊之1)2)、佐藤保則1)2)、浦澤喜一1)2)、川原田信1)2)
(目的)高齢者においては、様々な疾患の後の廃用症候群で高頻度に摂食・嚥下障害がみられる。高齢者における摂食・嚥下障害の実態を調査し、さらに嚥下造影による評価とリハビリテーションの結果について検討した。また胃ろうの有用性についても検討した。
(対象と方法)(1)H.14.3
における当院内科入院患者症例151例(一般病床48例、療養型病床103例)における栄養摂取状況。(2)当院で嚥下造影を行なった症例の基礎疾患とリハビリテーション前後での嚥下造影の比較による効果の判定。(3)胃ろう造設後の予後および摂食状況。
(結果)(1)内科入院患者平均年齢87歳で、経口のみの栄養摂取はわずか80例(53%)で、胃ろうは33例(23%)、中心静脈栄養は17例(17%)であった。(2)嚥下造影施行52例の基礎疾患は、脳血管疾患後遺症20例(39%)、脳血管性痴呆11例(21%)、アルツハイマー型痴呆8例(15%)等であったが、入院の原因となった疾患は肺炎・気管支炎が多かった。リハビリテーションによる改善を、重症37例中12例(32%)、中等症26例中8例(31%)で改善を認めた。(3)胃ろう造設症例30例では死亡例数5例(17%)、で非造設例39例中25例(64%)に比べかなり予後がよかった。また、胃ろう造設により、摂食・嚥下機能の改善が7例(23%)に認められた。さらに、胃ろう造設後7ヶ月より一部摂食可能となった症例や、102歳で胃ろう造設後、状態安定し一部摂食可能となった症例もあった。
(結論)高齢者では摂食・嚥下障害は原疾患によらず極めて多くの例に認められた。また、リハビリテーションの重要性が示唆された。さらに、胃ろうは予後の改善のみでなく、摂食状態などQOLの改善にも有用であると考えられた。
今後、胃ろう造設の適応決定が問題になってくると考えられるが、嚥下造影は重要な診断方法の一つになり得ると考えられた。また胃ろう造設後も摂食・嚥下リハビリテーションや評価を継続することが重要であると考えられた。