ホスピス病棟、緩和ケア病棟をもつ24病院へのアンケート調査の結果が歯科衛生士の雑誌で報告されています。「誰が口腔ケアを行うか?」の質問に対して『看護婦あるいは家族』という回答が82.4%をしめました。歯科衛生士の病棟口腔ケアへの参加については4病院だけで他の20病院では常勤、非常勤、ボランティアのいずれのかたちでも参加していないという回答でした。

  寝たきりになられた高齢者の口腔ケアは歯科医や歯科衛生士にとっても技術的に簡単なものではないので、それらの方がたの口腔衛生状態には不安がのこります。18病院(75%)で歯科衛生士の参加を希望していますが、常勤を希望と回答したのは3病院にすぎません。

  また「ホスピスケア参加の歯科医師や歯科衛生士に必要なものは何か?」という質問では『患者を1人の人間としてとらえて対応し、患者との対話、コミュニケーションを十分とることができること』があげられました。ホスピスケアでは、延命のための治療より余命をいかに生きるかというQOLの向上に重きがおかれます。アンケートの結果からも、口腔ケアは生命の質を最優先する全人医療の中で欠く事ができない、ということがホスピスでの既存スタッフと歯科医療スタッフの共通の認識であることが伺えます。しかし実際の口腔ケア担当者の口腔ケアにおける専門的技術は十分でしょうか?また歯科スタッフは全人的医療に必要な人間的な資質について十分な教育を受け、それを身につけているのでしょうか?

  21世紀、豊かになった日本。人間が人間らしく最後まで生きていくための医療や介護の環境整備は、まだまだやるべきことがたくさんあるようです。

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