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なにくそ!俺はここにいる 110

京都府 飛田洋さん(68歳)

心配御無用

つらくって


『一』
節電ブームに  あおられて
熱中症とか   騒いでる
 独り暮らしで  ない上に
 毎日お陰で   誰か来る
  私に関して   心配御無用

『二』
原発処理の   不手際で
復興遅れが   最悪だ
 蝿や蚊の飛ぶ  被災地と
 比べてこの身は 幸せよ
  私に関して   心配御無用

『三』
爺と婆あを   対象に
色々儲かる   詐欺がある
 携帯電話   持たないし
 あぶく銭には 興味ない
  私に関して   心配御無用


『一』
すまないねえ
手伝えないで  見てるだけ
 それが辛くて  見ぬふりで
 パソコン遊び  してるけど
うわの空でも  いるのだよ
みなに悪くて  つらくって

『二』
すまないねえ
電話に出れず  知らすだけ
 受話器外して  出られたら
 猫よりましに  なれるのに
腹が立つやら  泣けるやら
情けなくって  つらくって

『三』
すまないねえ
目途なく十年  世話やかせ
 明日の希望も  見込みなく
 家族の自由と  引き換えて
こんな気楽で  良いのかと
思うだけでも  つらくって


暑い夏こそ

人それぞれ


『一』
暑い暑いと   聞くたびに
 暑さ感じて   来るのだよ
理解下さい   おわかりを
随分久しい  寝っぱなし
 外へ一歩も   出ないから
 暑い夏こそ   冷えすぎる

『二』
鈍い鈍いと   ひやかすが
 他に歳より   いないかな
顔が赤いと   キケンでも
君とで体温   二度の差が
 独り静かに   いてるから
 暑い夏こそ   こだわるね

『三』
暑い暑いと   言うだけで
 暑い夏だと   知らされる
動き回って   やすみなく
朝から働き   ずくめとの
 同じ土俵は   無理がある
 暑い夏こそ   押さえてよ


『一』
牛のよだれと
 教えられてた  あきないに
 まじめ一途に  来たものの
思いがけなく  予期しなく
 病にたおれて  お茶にごす
 人生いろいろ  人それぞれ

『二』
牛のよだれと
 伝え聞いてた  あきんどを
 手本みたいに  真似てたが
無理な仕事が  無茶を呼び
 再び立たれぬ  破目になる
 人生いろいろ  人それぞれ

『三』
牛のよだれを
 忘れないぞと  パソコンで
 余命ひたすら  下手は書く
時間つぶしを  することで
 皆はフリーで  デパ地下へ
 人生いろいろ  人それぞれ


元気してます生きてます

艶歌書くのはよそうかな


『一』
十年過ぎても  世話になり
元気してます  生きてます
 見舞いの人は  減って行き
 薄れる義理に  あきれるが
 変らぬ家族の  ぬくもりを
 ベッドの上で  抱いてます

『二』
ワープロTV  つれづれに
元気してます  生きてます
 刺激がなくて  ネタなくて
 辞典や辞書が  引けなくて
 作詞の数なら  落ちるけど
 楽しみながら  書いてます

『三』
咽び咳き込み  よだれくり
元気してます  生きてます
 苦しい痛いは  ないけれど
 話せず動けぬ  口惜しさに
 漸くどうにか  なれて来て
 ベッドの主を  やってます


『一』
作りばなしに  つかれたし
艶歌書くのは  よそうかな
 恋のときめき  よりつかぬ
 恋のためらい  過去になる
古いカーテン  抱きまくら
何処に詩情が  あるものか

『二』
何だかんだと  なにげなく
演歌書くのは  やめるかな
 本を読むにも  手はマヒで
 本をめくれず  世話かける
ヒット作から  真似るにも
資料ないぞえ  知らぬぞえ

『三』
作りばなしは  つみつくり
艶歌書くのは  よそうかな
 誤解されたり  呼び込んで
 誤解気づかず  産んでいた
俺に似合いの  この部屋で
刺激ないまま  なんとなく

主治医より一言

<<FAX送信のご挨拶>>

 先日は、訪問時に“なでしこJAPANの試合”がある事を教えていただき、ありがとうございました。おかげで、家に帰ってからゆっくり録画で楽しめました。

 しかしながら、飛田さんは、世の中の動きを、誰よりも良く御存知で感心します。