PDNセミナーの開催報告
弘前PDNセミナー
第1回 青森胃ろうと栄養セミナー

 2005年10月15日(土)、お昼前から降り始めた雨にもかかわらず、92名の参加のもと、東北ブロック初のPDNセミナー「第1回青森胃ろうと栄養セミナー」が、弘前商工会議所2階大ホールで開催された。㈱メディコン、三協製薬工業㈱のスタッフの皆さんの協力により、受付、テキスト販売、会場整理、セミナーの進行がスムーズに行なわれた。
  講師は五所川原市から健生五所川原診療所所長の津川信彦先生(テーマ:PEGの概論、造設と交換)、弘前市からむらもとクリニック院長の村元和則先生(テーマ:日常ケアとトラブル対策)、そして仙台からは年内に発足予定の東北PEG研究会の責任者である 宮城学院女子大学・食品栄養学科臨床栄養学科教授の朝倉徹先生(テーマ:PEG長期栄養管理の基本)。 

講師の先生方

 津川先生は特にPEG施行におけるインフォームドコンセントの重要性にふれ、「本当に造って喜ばれる胃ろうにするためには、造設時のみならず、造設後の治療や生活についてもきちんと説明することが必要」と力説された。また、本セミナー開催の数日前に新聞報道された胃ろう交換時の腹腔内誤留置による死亡事故についても言及され、「胃内に確実に入っていることを確認することは大前提だが、万が一誤挿入された場合は何らかの兆候があるはず。患者さんに一番身近に接しているナースの皆さんがそれをいち早く察知して医師に連絡し、正しい処置をおこなうことで救命できることもある」と、患者さんに対する観察力-異常を異常と迅速に判断できる力-を身につけてほしいと述べられた。
  村元先生は、勤務医時代に脳梗塞後遺症による嚥下障害への対応としてPEGを多数手がけておられ、脳外科のナースと共に造設のタイミングとその後の嚥下機能の回復力との関係について研究してこられたが、「開業したらそんなにPEGにと関わることは多くないだろうと思っていた」とのこと。しかし実際は近隣施設から胃ろう管理の依頼を受けることが多くなり、受け入れている割には正しいケアがなさされていないことに愕然とし、地域全体の認識や管理法のボトムアップのためにPDNセミナーも活用していこうということで、積極的に関わっていただいている。
  見事な(?)バンパー埋没症候群の内視鏡写真を供覧しながら、それを疑うべき兆候についても解説、「とにかく毎日観察してくるくる回すこと。さわっているが回していなかったり、回しても元に戻ってしまうような状態を異常と判断できずにバンパーが埋もれてしまったケースもあった。回らないということは何らかの異常が発生していると考え、すぐ医師に報告を」と参加者のほとんどを占めていたナースのみなさんに強くアピールされた。

 休憩時間を利用して、㈱メディコンの製品展示および三協製薬㈱によるコーヒーブレイクセミナー「増粘剤使用による栄養剤の半固形化」が行なわれた。直接製品に対する質問もできるとあって、好評のうちに後半の講演へ。
 
朝倉先生は臨床栄養分野の第一線でご活躍中。「長期栄養管理は院内管理だけではなく、むしろ地域一体となって取り組まなければ継続してゆけない。医療機関同士、また行政機関とも連携していくシステムの構築が必要」と、栄養教育システムや保険制度についても最近の話題を紹介してくださった。
  ご存知のとおり、この10月より介護保険の適用施設において、食材費および調理費用に対する利用者負担が増加した。その代わりに栄養管理体制やNCM(栄養ケアマネジメント)に対する加算、経口移行加算などが新設された。これらは加算の条件として多職種協働による栄養管理が定められており、医療保険におけるNST加算の前倒しとも言われている。日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)認定のNST専門療法士の資格制度を例に挙げながら、正しい栄養管理を行なえる人材の育成が急務であることも述べられ、「時代は栄養!」と締めくくられた。

 今後青森では、八戸市、青森市でのPDNセミナー開催が決まっている。「県内の主要都市でのセミナーを企画し、そこに参加された方々が標準的なコンセンサスを得た教材によって勉強し、おのおのの職場でそれを広めケアの標準化を進めていただきたい」と、講師の先生方も呼びかける。単に講義を聴くだけではなく、ディスカッションを主体としたセミナーがあってもよいのではないかという意見もあり、今後のセミナー展開が楽しみである。

 アンケート結果の詳細は後日報告するが、自由意見の中に「感染してからの対応の仕方ではなく、感染する前の注意点を大切にしていきたいと思いますので、その方法を教えてください」というものがあった。感染防止目的の口腔内消毒について、PDN談話室でも熱い議論が交わされていた。このうような現場のニーズを吸い上げ応えていくセミナーであるよう、各方面からのご意見をお寄せいただきたい。

 

会場風景

 

 

 

(PDN 岡崎)