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[No.13482]再開早々のご相談です。From:YYさん(PDN代理)

さて、早速ですがご相談です。
『71歳の父が頭頸癌の再発で、現在経鼻移管による栄養摂取をしています。一般病院から緩和ケアのある病院への転院にあたり、胃ろうかIVポートの増設をしていただくことになったのですが、主治医の先生が胃カメラを飲む造設術は、のどの辺りの癌組織を傷つけるかもしれないのでやりにくい、IVポートにしよう、ということをおっしゃいます。主治医の先生は口腔外科の先生で、手術は別の科の先生がなさると思います。
家族としては、まだ胃腸が元気に働いているのにIVポートでは父がかわいそうでなりません。
以前テレビかなにかで、胃ろうの造設術のことをやっていたときに、胃カメラをのまないで行える造設術があると聞いたことがあります。
もしあるようでしたら、その内容や、実際に処置をされる担当科、その造設術の名前をお教えいただけないでしょうか。
どうぞよろしくお願いいたします。』

とのことです。
内視鏡を使わない造設方法というと、エックス透視下経皮的胃瘻造設術、超音波下胃瘻造設術、腹腔鏡的胃瘻造設術、開腹(外科的)胃瘻造設術、という方法があると、本で読みました。
YYさんのお父様のような場合、先生方はどうなさっておられますか?頭頸部の癌組織を刺激することによるデメリットと、しっかり栄養をつけて抵抗力をつけるメリット、造設における周囲事項なども教えていただけるとありがたいのですが。。。


Re:再開早々のご相談です。 From:カネコ@北海道

>YY様

 当院で、かつ私ならば開腹胃瘻造設術を行います。全身麻酔は頭頸部癌がある場合、極めてリスクが高いので腹腔鏡的胃瘻造設術はやめた方が良いでしょう。あとは透視下胃瘻造設術、超音波下胃瘻造設術、開腹胃瘻造設術ですが、透視下胃瘻造設・超音波下胃瘻造設は経験もありませんし、リスクも高いと思われますので。

 開腹胃瘻造設術は腰椎麻酔もしくは硬膜外麻酔で可能ですので(90歳の頸部食道癌で造設したことがあります。術後2年以上生きられました)、腹腔鏡下手術よりは安全です。
 特にある程度の腕の麻酔科医がいらっしゃれば硬膜外麻酔下での造設は術後疼痛管理という意味でもメリットが大きいと思います。

 透視下および超音波下についてはご経験のある先生のコメントをお待ちしたいです。

 ポートはメリットも大きいですが、胃瘻のほうが個人的には全身管理によいと思っています。


Re:再開早々のご相談です。 From:YYさん(PDN代理)

カネコ先生お忙しい中ご教授ありがとうございました。

現在はまた鼻から経管を入れながらの点滴を受けながらの、
しかしながら、昼食だけは経口で様子を見ています。

現在の病院は一月以上の食事を採れない入院患者はPEGにするそうですが、私の我が儘を通して頂いてます。(そのかわり私が食事を食べさせてます)

>PEGは一度作ったらやめられないというものではありません。食べながら不足分をPEGで補うという発想もあり得ます。柔軟に対応するのがよいと思います。

はい、ケースバイケースで主治医と相談の上進めていこうと思っています。

返信有り難うございました。



[No.13488] 北海道のカネコ先生へお礼と質問 From:yy

カネコ先生、お忙しいなかお返事をくださいまして本当にどうもありがとうございました。実は今日主治医の先生とお話をしましたところ、胃婁ではなくIVポートを、と強く勧められました。硬膜外麻酔による開腹術についてお聞きしたら、「硬膜外麻酔では胃から遠すぎて効かない」とおっしゃいます。おかしいなと思いましたが、それ以上言っても取り合ってくださらないので、あきらめざるを得ませんでした。現在の病院でIVポートを造設していただき、転院先のほうで可能なら胃婁を造っていただく相談をしてみようと考えています。そういうことも可能かもしれないと思っています。

このサイトは胃婁についての談話室かとおもいますが、ひとつだけIVH(IVポート)について質問をさせていただけないでしょうか。現在父は経鼻い管による栄養摂取をしています。IVポートは、経鼻い管の取替え時期(10月終わり)から使用することになります。その場合IVポートを造るタイミングはいつ頃がいいのでしょうか。IVポートは使わないのに造っておくのはいいことなのでしょうか。早くつけた分取替え時期が早く来てしまったりすることはないでしょうか。

 

不躾なお願いで大変失礼とは存じますが、おこたえいただけるようでしたら幸いです。



Re:北海道のカネコ先生へお礼と質問 From:カネコ@北海道

>YY様
 まずおたずねのIVポートについてですが、胃瘻とは異なり、通常、閉塞・感染などがない限り交換しません。ゆえにポート挿入時期は経鼻胃管を抜去する前に行うのが普通だと思います。(もちろん抜去した後、末梢点滴で繋いで、その後にという選択もあり得ますが)

 なお、IVポートは先に作っておいても問題ありません。ずっと使わないでいると詰まってしまう可能性はあり得ます。定期的にヘパリン注入などを行っておく必要はあるでしょう。

 あと、硬膜外麻酔についてですが、その主治医の先生はおそらく麻酔の基礎知識を欠いていらっしゃると思います。脊椎麻酔と混同されているのではないでしょうか?。脊椎麻酔では十分に効かせない限り、「胃から遠すぎて効かない」可能性はあり得ますが、硬膜外麻酔は適切な部位に麻酔すれば十分手術可能です。手厳しいようですがそもそも「胃から遠すぎて効かない」と言うこと自体、硬膜外麻酔がどういうものなのか分かっていらっしゃらない証拠です。きちんとした硬膜外麻酔で胃瘻造設程度の手術が出来ない・・・なんて言うと麻酔科の先生に怒られますよ(笑)。なお脊椎麻酔でも麻酔を上手にやれば胃瘻手術は可能です。

 現に私は硬膜外麻酔のみで手術できました。患者さんは90歳でしたが、「俺は100歳まで生きる」とおっしゃる大変元気で頭のしっかりした方でしたので、痛みをちゃんと訴えることも出来る方でした。ご本人の100歳まで生きる希望を叶えられなかったのは残念でしたが、あのとき開腹胃瘻造設を選択したことは良かったと思っています。



[No.13489] カネコ先生、お返事どうもありがとうございました From:yy

早速のお返事をどうもありがとうございます。IVポートについての情報は、早速父に伝えます。安心すると思います。とても残念ですが今の主治医の先生には胃婁造設を手配していただくことができませんでした。父ももちろん胃婁を希望していましたが、最後には父のほうから「それではIVポートでお願いします」と折れてしまったので、仕方がありませんでした。

でもこれにめげないで、転院先の緩和ケア病棟の先生に、硬膜外麻酔による開腹胃婁造設術についてご相談してみようと、父と話しました。90歳の患者さんのお話は先日先生のご返答と一緒に父にも伝えました。うれしそうに聞いていましたので、とても元気づけられたのだと思います。

 

カネコ先生からのご返答は私たち親子にとってとても力になりました。こころより感謝申し上げます。このような談話室を維持してくださっていますDPNさんにも厚くお礼申し上げます。