HOME > 過去のQ&A > 適応 > PEGの適応、特に年齢について

No.228 PEGの適応、特に年齢について From 小倉和雄

私は現在、老人ホームの診療所に勤めていますが、PEGは男女それぞれ何歳ぐらいまで適応になるでしょうか?

Re:PEGの適応、特に年齢について From 平成の一休さん

”小倉和雄先生”初めまして、ようこそPEGホームページへ投稿して頂き有難う御座います。

お尋ねのPEG適応年齢についてのご質問ですが、過去の実績から推察するとアバウトですが、 PEG造設は下は【赤ちゃん】~上は【90歳位】迄の方々が装着されていらっしゃるのではないかと念います。
現在は在宅医療・介護施設等々で【術後食事が摂取出来ない方】が主な対象者でしたが、高齢化社会に入って、老人ホーム入所者の栄養改善策の一環として、希望者にはPEGを導入されるケースは当然出て参るのではないかと思っておりました。
適応年齢と問われればお答えするのは大変難しいのですが、仏教者の視点・立場と前置きしてお答えするとすれば、該当する方が自分の意志がはっきりしている場合は、もっと生きたいと言う【ご本人の生きる意欲次第】ではないでしょうか。
又、ご本人の意思が確認取れない病気持ちの方が対象となると、【ご家族を含めての合意】とご本人の【元気な当時の生きる意欲】どうだったかを出来るものなら確認される必要性があるような気が致します。
更に、入所されている高齢者の方が老人施設でどのような【位置付け】に置かれているのかも【判断基準】となるものと念います。【1ツだけ似たようなケースの相談】を私自身お受けしたことがありますのでご紹介します。
その方は【年齢94歳・男性】で【術後障害で私と同じ病院の患者】さん且つ【在宅療養の患者】さんでした。健康状態は特に困ることはない状態で家庭環境も理解ある家族の囲まれてらっしゃいました。その患者さんは近くの商店街で店を経営されておられ私も利用させて頂いておりましたので気楽にご相談されました。94歳になるけど【おじいちゃん】にPEG造設はどうかしら?と言った内容でしたので意識のはっきりしているので後は【おじいちゃんの気持ち次第】ではないでしょうか。あえて申し上げるならば【そのままそっと】老衰される方が自然な場合も選択肢の1ツではないでしょうか?とお答えしたら、ご家族の方から【今更長寿の為】痛い思いをしてまでPEGでカバーすることもないわね。アハハ・・って感じで終わりました。
ですから、この問題は第三者がとやかく言えない聖域のような気が致しました。やはり当事者かご家族関係者のご判断に委ねるしかないのではないでしょうか?【いいとか・わるいとか・賛成とか・反対とか】と言ったの決め事とか線引きとか出来ない領域かと念いますがが如何がでしょうか?
その家族の方は私のPEGビデオを見せて判断材料にしてもらいましたら結局【もう悔いはない】と本人の確認が取れましたのでPEG造設は検討外としてこのまま行こうとの結論に達しまして現在に至っておりますが【おじいちゃん】お元気ですよ。先生のご質問のお答えにはならいかもしれませんがご参考になればと念います。お力になれず失礼致しました。
(^^)/~~デハデハ(>_<)/~~さびしいー( ̄ー+ ̄)ふっ合掌三拝

Re:PEGの適応、特に年齢について From penta

胃ろう(PEG)は何歳までが対象かとの問いかけは、肺炎がきっかけで、栄養低下、体重減、微熱の90歳の実母と重なる問いかけです。前にもこの談話室に書き込みさせていただきましたが、母は現在、介護保険の要介護2で在宅介護をしています。長く療養病床でお世話になっておりましたが、どうしても家に帰りたいという本人の切実な願いを入れて退院させてもらいました。

どれだけ親切にしていただいても、母にとって病院の環境は閉塞感をつのらせるものでした。閉塞感は別の精神的、肉体的な病状をもたらします。慢性的な長期の病気をもつ高齢者にとって、我が家ほど安らぐ場所はないということを改めて反省させられました。現在、母はデイケアやショートステイを取り入れながらの在宅介護です。

在宅介護で一番気を使っていることは、栄養の問題です。現在は皆で気をつかい小康状態がつづいていますが、いつ低栄養になるかと心配です。栄養は口からとることが絶対に基本であることを承知して、食べてもらうための介助をしておりますが、どうしても食事だけでは栄養が足りません。そのため補助栄養として、口当たりがよく、飲みやすい経腸栄養剤を飲んでもらっております。最近はなれてくれたようで、「これを飲むと、体がシャンとする」などと言います。以前、栄養状態が極度に低下したときから、この方法を続けております。今のところ、食事での誤嚥の心配もなく、助かっております。
胃ろうについても、いざという時を考えて学びました。身近なところで、腕の静脈点滴だけで栄養障害を起こして急に亡くなった方や、長期の経鼻チューブの悲惨さも見ており、胃ろうについての知識を集めました。
鈴木先生、小川先生の著書から感じることですが、私は胃ろうは決して特殊な医療とは考えておりません。PEGは嚥下障害をもつ小児のために開発された栄養法だそうですが、確かに他の栄養管理法に比べると、利点が大きいように思います。老人も年をとった小児ではないでしょうか。PEGが最善の方法になることも当然あるはずです。

PEGのすべてを良いと信じているわけではなく、デメリットも解っている積もりです。他の栄養法にも、メリットとデメリットがあるのと同じです。大切なことは、その人の病状にあった最善の方法を選ぶことだと思います。どなたかの書き込みに、「PEGは市民権を得た」とありましたが、PEGは既に特別な栄養法ではなく、選択肢のひとつとして考えたいと思います。これから若し90歳の私の母に、胃ろうが最善であるとなれば、私はPEGの選択をためらいません。胃ろうの造設を年齢で線引きすることは出来ないし、してはいけないと思います。この点では、一休さんが紹介された94歳の方の事例は大変参考になり、共感を持ちます。
高齢化社会となって、100歳に手が届く年齢になっても、生きる気力のある人はたくさん居られます。また、それぞれに価値ある人生を歩み、温かい家庭環境をもっております。子育てに人生のすべてを賭けてきた親に、いつまでも生きてほしいと願う子供の気持は世界共通です。だから人の最期は最も尊厳でなくてはならないと常々考えております。

胃ろうの選択は、可能な選択肢の中から、患者の個別性を尊重し、医療者と家族が正しい医療知識を共有し、皆で相談することだと思います。そのためには信頼できる医師に恵まれることを願うほかありません。
答えにはならないかもわかりませんが、いつか迎えなければならない母の最期について、私の考えていることを述べさせていただきました。

Re:PEGの適応、特に年齢について   From リハビリ科の医師

 PEGの適応は、年齢と関係ありません。一般的に、正常な消化管機能を有するが必要な栄養を経口摂取できない症例で、4週間以上の生命予後が見込まれる場合に一般的なPEGとなります。本邦では、さらに癌末期の補助栄養、口腔、頚部手術後の経腸栄養、炎症性腸疾患に対する成分栄養投与、癌性腹膜炎などによる
消化管通過障害に対する減圧目的にもPEGは施行されています。逆に、PEGの禁忌、難しい症例とは、以下のような症例です。
 
 ①PEGの禁忌
 ・内視鏡通過困難な咽頭、喉頭、食道、胃噴門部の狭窄
 ・大量の腹水貯留
 ・高度の出血傾向
 ・胃の急性粘膜病変
 ・急性疾患による全身状態不良

 ②PEGの難しい症例
 ・極度の肥満
 ・肝臓の腫大
 ・上腹部の手術の既往
 ・高度な横隔膜裂孔ヘルニア
 ・非協力的な患者

 近年、90歳台の肺癌患者さんに対しても、全身麻酔下で開胸手術を行なう時代です。適応があれば、年齢に関係なくPEGを施行して、栄養状態を良くすることが必要であると考えます。

関連PDNレクチャー(医療従事者向け)

Chapter1 PEG 2.適応と禁忌