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No.373 ぺグ造設について   From かーやん
初めまして。看護師をしているかーやんです。
私の父は、72才で脳硬塞、糖尿病(コントロール良)があり、1年前に脱水により、誤えん性肺炎で寝たきりとなり、在宅にて現在まで経鼻栄養にて月1回チューブ交換してますが、痴呆もあり、夜間何回か自己抜去し、その度呼ばれて再挿入します。結局両手を鼻に届かないくらい抑制してますが、肩の痛みを、訴えチューブ交換時は、口の中でとぐろを、巻くためなかなか入ら親子の戦いとなります。 逆流性食道炎もあり飲み込みの練習も色々と角度、場所、粘調度などを、変え試みてますがどれも3口目で真っ赤に。
ひどいむせ込みになり吸引器が手放せません。1日中ゼロゼロと痰がらみがあるため胃ろうに・・・・と家族は思いがまとまりつつあるも、主治医に相談したところ「延命治療にしか考えてない!家族が決める事では、ない。何回も肺炎を、繰り返すなら考える!」との返事。幸い、2回目の肺炎は、まだないのですが、しかし、父をしばりながら介護している母は、罪悪感にさいなまれ、かゆいところにも手が届かない父を看てることは、これでいいのか・・とてもつらいと言ってます。
もちろん主治医にも責任がある為患者サイドの流れが無理なのもわかっていますが、ペグの利点、欠点も家族は、わかってるつもりですし、その後のケアについても勉強中です。
患者の苦痛や、介護者のストレスを取り除き在宅介護が自然体でできればと思っていますが、皆さんは、どう思いますか?人形の様に縛られている患者にペグは、無理なのでしょうか?どうか教えて下さい。宜しくお願いします。

Re:ぺグ造設について   From もっち
こんにちは、訪問看護師のもっちです。かーやんさんのお気持ちお察しいたします。
私も訪問看護をしていて、ご本人・ご家族の思いを受け止めながら、主治医の先生方にどのようにご説明したら解って頂けるのか、日々悩んでおります。主治医の先生は24時間365日お父様を見ていらっしゃるわけではありませんし、障害を持ちながら、また医療処置を行いながら生活するということがどんなに大変なことか、イメージがわかないのかもしれません。私達は普段何気なく生活していますが、生活するということは実はとても大変なことなのです。経鼻胃管を挿入して生活をするという、ご本人の苦痛や大変さ、介護する方の苦痛や大変さを主治医の先生にお話して、ご本人・ご家族のお気持ちを解っていただいた上で、ご本人の今の状態でPEGを行った場合の利点・欠点について、主治医の先生とトコトンお話していただくことしかないのでは、と思います。ホームページの体験記やPDN通信、PEGへのご案内や胃瘻手帳などの冊子も参考にされて(主治医の先生へお見せしてもよいのではないかと思います)くじけずに頑張って下さい。応援しています。

Re:ぺグ造設について    From moemoe
● PEGに対する認識の変化 私は,現在まで1700例ほどPEGを行ってきました.おそらく日本の中では最も多い数だと思います.10年程前にPEGを知ったのですが,最初のPEGの印象は,こんなに簡単に胃瘻が造れるのかといった極めて医療者的な感想でした. 当然,患者さんやご家族への恩恵についてなどは考えていませんでした.ところが,実際にPEGを行うと,今まで考えていなかったいくつもの驚きがありました.かーやんさんのような症例にいくつも出会いました.私は外科医で,しかも専門が食道外科ですので,数分たらずで終わってしまうPEGを,なんとなく馬鹿にしていたところがあったのですが,PEGを受けた患者さんやご家族,それと医療者をみて,その認識は大きく変わりました.治療の大きさと効果は,必ずしも一致しない,そして,まず基本は患者が前よりも少しでも良くなることであるを痛感いたしました.

● 私の感想 本題に戻ります.まず,本症例にPEGは適応です.その根拠としては,まず患者さんが苦痛を強いられていること.それとそれをみているご家族も同様につらいということです.さらには医学的にもおそらくPEGの適応ということです. 次にPEGを行うか,行わないかは,医師だけが決めるのは誤りです.もちろん,PEGが良さそうでも実際には医学的に問題があることも少なくないので,今回は,家族と医者の両方できめるべきでしょう.

● 参考までに ここで商売をする気は全くないのですが,このような内容について考えた本(小生が書きました)をご紹介いたします. おなかに小さな口(PDN) 緩和内視鏡治療(医学書院)これはドクター向けです

Re:ぺグ造設について    From みっくん
 かーやんさん、こんばんは.私は小病院の消化器内科医です.
経鼻胃管と胃瘻の比較については色々な点から検討されています. 審美的な要素(外見)、食道胃逆流による嘔吐や誤嚥性の肺炎の発生率、事故抜去の比率、交換頻度などの点では胃瘻は経鼻胃管に勝るというのが多くの報告の結果です.特に表情の豊かさは経鼻胃管にはない胃瘻の大きなメリットだと思います.当院で経鼻胃管と胃瘻の双方を経験されたご家族にききましたところ、あらゆる点で胃瘻の方が評判がよく、経鼻胃管がよいと答えられた方はいませんでした.
ご本人さまからは「鼻の管が無くなってゆっくりした」という感想が決まってきかれます.既に経鼻胃管が導入されているということは、「慢性の安定期にあり」「消化管からの消化吸収が可能な状態にある」ということだと推測します.もし、胃瘻造設を行うのでしたらこの時期が最適ではないかと私は思っています.
(「次に肺炎をおこしてから」という発想には正直なところ反対です.)記載にありますような「経鼻胃管の挿入が難しい(失敗すれば気管内注入の危険があります!!)」「事故抜去の防止のために手を縛らなければならない」方こそ、胃瘻造設によって大きな恩恵を受けられるのではないでしょうか.造設のリスクは確かにあります.けれど、長期的にみた時に経鼻胃管によるトラブルの発生(誤挿入や誤嚥)の危険と抑制による患者さんとご家族の精神的な苦痛を鑑みた時、胃瘻造設は選択の余地が十分にある治療法であると文面からは思われました.(ただし、病状や基礎疾患によっては安定期であっても手技的に胃瘻造設が困難な場合も確かに存在します.) 胃瘻造設の適応がある場合に造設するかどうかは、本人が決められない時には介護する家族の意向できめるのが現状では一般的でしょう.主治医は、造設をしないのであれば、造設の適応でない(あるいは造設ができない)理由を家族に説明する義務があると考えますが如何でしょうか.理由が分かればご家族も納得することと思います.
主治医の経験や専門科の問題がハードルになっている場合もありますので、近くに胃瘻について明るい病院(PDNの医療機関登録リストからさがしてみて下さい)があればセコンドオピニオンを求めるという方法もよいかと思います.(現在、セコンドオピニオンは患者の権利でもあります.) 特に「献身的に介護しているお母さまが罪悪感を感じておられる」ということに非常にショックをうけました.このことを軽んじてはいけないと思います.主治医が無理であれば、担当の看護師にでもその思いを打ち明けて、家族の思いを上手に主治医に伝えてもらえるように頼んでみるという手もあります.御検討下さい. 
応援しています.長くなってごめんなさい.みっくんでした.


Re:ぺグ造設について    From 平成の一休さん
"かーやん”さん、初めまして平成の一休さんと申します。
表題のご相談に関して経緯とご家族の置かれた立場を念うと本当にお気の毒です。
全国に”かーやん”さんと同じような環境化で・孤独感・孤立感・絶望感等々で苦しんでいらっしゃる患者・ご家族の方々が大勢みえるなと文面からも拝察出来ます。でも、我がことのように、こうして相談に乗ってくださる機関があると言うことは「弱い立場」の人にとっては実に心強い存在ではないでしょうか。
特に「もっちさん」や「dr/moemoe」さん「dr/みっくん」さん等からのコメントはこれ以上ないほどの素晴らしい「セコンドオピニオン」と私は読んでいて「感動」しました。やはり、いずれの方も「数多い体験と苦闘の歴史」を感じさせる「重みと語る資格」があると感じます。さて、主治医の先生の言動を伺っていると、どうも、病気にばかり気持ちを奪われ病人のことを忘れてしまわれているような印象を強く感じました。
このような場合は、ご家族の方も可能性がある限りその可能性を自分で縮めてしまわないように心がけられたら又新たな展開に発展するのではと期待しております。「誰かが動かない限り誰も動かない」とすれば双方に同様のリスクが存在するからではないでしょうか。やはりこの問題は主治医とご家族とで納得ゆくまで充分に話し合いをされた方がベストかと念います。もし、PEGを造設したいと言うお気持ちでしたら「患者・家族の皆様の強い意志が必要」と念われます。患者の立場として8年間悪戦苦闘してきた、今、私が出来ることは力不足なので「精一杯のエールお贈りする」ことだけしか出来ないことをお許し願います。
お大事になさって下さい/合掌三拝。


Re:ぺグ造設について    From NAO

かーやんさん、はじめまして。私もかーやんさんと同じ立場の患者の家族(理学療法士)です。
私の父の場合はV-Pシャントが壁になって、2度も胃ろう造設を断られました。今回、敗血症で再入院して、脇腹に太い管を2本も入れられて、それでも上手く排出されず、先生方がおっしゃるには肺の尖端のほうには水(膿)が残ったままだそうです。きつそうな父を見ていて、母も私も、「このような治療は果たして父本人は望んでいるのだろうか?」と、とても辛くなりました。医者や看護師には気付かない、いつも一緒の家族だから分かる本人の表情・意思と言うのは確かにありますよね。ご家族、みなさんで力を合わせて頑張って下さい。