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No.221  PTEGについて From:mai 2002/05/16(thu)

PTEGがどういったものであるのか詳しく知っている方がいらっしゃるのでしたら教えてください。お願いします。


Re:PTEGについて From:みっくん 2002/05/18(sat)

おひさしぶりです.みっくんです.mai さん、はじめまして.

PTEGについてお答えします.日本語名は経皮経食道胃管挿入術です.
イメージは頚部食道(左鎖骨の上数cm付近)をエコー(超音波)と透視で確認しながら食道瘻を作成し、そこに長いチューブを留置して先端を胃に開孔させるものです.
当院では様々な理由でPEGができない方に行っています.慣れもありますが、当院では外科的に胃瘻を作るよりは簡単だと思います.(もちろん慣れた外科医にとっては外科的胃瘻の方が簡単でしょうが)今まで3件行いました.処置時間は20分程度です.局所麻酔で行う点もPEGと似ています.術後の経過はいいです.管理の仕方はほとんど胃瘻といっしょですが首からチューブが出ているので抜かれやすいのと、チューブが長くて細いので詰まりやすいのが欠点です.時間がないのでまずは簡単に説明しました.また後で詳しくレスいたします.


Re:PTEGについて From:みっくん 2002/05/19(sun)

第2報です.PTEGについてはまだまだ一般に普及しているわけではないので医療関係者でも略号もその存在も知らない方がほとんどだと思います.

PTEG(Percutaneous Trans-Esophageal Gastro-tubing) 経皮経食道胃管挿入術が正式名称、平成6年に東京女子医科大学付属青山病院外科の大石英人先生が中心となって日本で開発された手技です.特徴は、PEG困難な胃手術後や腹水貯留の場合でも簡便に安全に低侵襲に頚部食道瘻を造設できることです.造設セットはスミトモベークライト社製.社の方へ連絡すれば説明用のビデオももらえると思います.

具体的には、1)鼻または口から食道頚部に先端に非破裂型の特殊なバルーンのついたチューブを留置し、造影剤を混ぜた生理食塩水で食道入口部でバルーンを膨らませる.2)エコーと透視でバルーンを確認しながらバルーン中央を直接穿刺する.3)穿刺針内腔にガイドワイヤーを通して食道内へガイドワイヤーを留置する.4)ガイドワイヤーが十分食道に留置されたらバルーンチューブは抜去する.5)ガイドワイヤーを軸にしてダイレーター付シースにより瘻孔を拡張する.6)シースが留置されたら内腔にカテーテルを挿入し透視下で確認しながらカテーテル先端は胃の前庭部に位置させる.7)シースをピールオフしてカテーテルを皮膚に縫合して終了.これがおおまかな手順です.(医療関係者以外の方、煩雑な内容で大変申し訳ありません.)

以上がPTEGに関する概略です.

実際に3例に行ってみての私の感想も一言.当院では胃がなくても多くは内視鏡的に胃瘻(PEG)腸瘻(PEJ)ができますので適応症例は多くはありません.実際は、巨大食道裂孔ヘルニアで胃の大部分が胸腔内にあったり、拡張した横行結腸が胃の前にあったり、胃全摘で小腸に適切なPEJ実施部位をどうしても捜せなかった場合に実施しました.腹水の貯留例(特に癌性腹水)や進行胃癌でPEGができないときなども良い適応だと思います.また、胃瘻では漏れがひどく継続できない場合も今後導入を検討しています.いずれも処置時間は約15分程度でした.内視鏡を使わず、患者さんは終始仰臥位(仰向け寝)で行います.皆短期間で経管栄養が可能でした.その後のトラブルでは、チューブの閉塞(初回留置は12Frの細いチューブであるため)、自己抜去(首からチューブが出るので胃瘻のように服の中にしまいきれない)を経験しています.

私は留置チューブを入れ換え毎に徐々に太くし最終的には18Frにし、例の酢水の停滞で対応しています.PEG以上に新しい手技であり、まだまだ未実施施設での受け入れは十分ではありません.訪問看護師さんにチューブの入れ換え方法を病院に見に来てもらったりしながら指導しています.

現状では、PTEGは経管による経腸栄養の一手段としてPEGにとって代わるものではありませんが、PTEGによって胃瘻の弱点を克服し、PEGが不能や胃瘻栄養が継続できない場合でも快適に経腸栄養が実施できるようになる場合もあり、特に癌性腹膜炎の腸閉塞に対する減圧胃瘻としては減圧PEGを凌駕する適応も考えられると思っています.

長々と難しい話をしてしまいすみませんでした.分からなかったところがあればまた聞いて下さい.